1995 Fiscal Year Annual Research Report
アラビア文字文献による中期モンゴル語の音声学的研究
Project/Area Number |
06610465
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
斎藤 純男 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (10225740)
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Keywords | ムカディマット・アル・アダブ / 中期モンゴル語 / アラビア文字表記 / 母音弱化 / アクセント |
Research Abstract |
1 予定していたアラビア文字文献すべてに見られるモンゴル語語彙のパソコンへの入力をひととおり完了した。 2 上の語彙索引を用いて、中期モンゴル語の母音について調査し、モンゴル文字文献や漢字音訳文献の表記と照らし合わせたところ、以下のようなことがわかった。 (1)同一の語で複数の母音表記をもって現れるものは、母音とその直前の子音との間に調音的に密接な関係があることを発見した。すなわち、いくつかの語においては母音が硬口蓋子音と両唇子音の直後で本来の音価を失ってそれぞれ前舌(=硬口蓋)母音、円唇母音になっているのである。一般音声学的に見れば、これは母音が弱化した結果である。また、母音をplane表記する文献においてそれが表記されていない部分は弱化がさらに進んで消失したものと考えられる。したがって、次のように推定できる。 ・西部中期モンゴル語はストレス・アクセントをもつ言語であり、ストレスの置かれない音節の母音が弱化し、さらに消失した ・この弱化母音・消失母音の分布から見ると、西部中期モンゴル語のアクセントは、語末に置かれる場合が多いようであるが固定されてはおらず、基本的には自由アクセントであった 語末の非高非円唇母音を表すのに、〓と〓の両方が用いられる。Scharlippは、中央アジアのチュルク系諸言語のアラビア文字正書法は19世紀になるまでシステマティックではなかった、というが、その影響を受けていると考えられるムカディマット・アル・アダブにおいて〓と〓は語によって使い分けがあったことがはっきりした。
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Research Products
(1 results)