1995 Fiscal Year Annual Research Report
日本語周辺方言における音韻構造の類型性に関する研究
Project/Area Number |
06610469
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大野 眞男 岩手大学, 教育学部, 教授 (30160584)
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Keywords | 音韻体系 / 育変化 / 子音体系 / 母音体系 / 琉球方言 / 方言区画 |
Research Abstract |
平成6年度およびそれ以前の臨地調査資料を基に、日本語諸方言の中でも南琉球方言に集中して、諸方言の音韻構造および音対応の比較・検討作業を行った。音韻的な多様性を示す南琉球諸方言から、臨地調査による資料が利用可能な与那国・西表租納・波照間・竹富・新城・石垣・多良間・平良・長浜・池間・大神方言を選び、共時的・通時的双方の観点から音韻構造の分析を行った。 共時的な観点からは、中舌母音を有する4母音基調の方言と中舌母音を有しない3母音基調の方言とを分類し、前者が南琉球中央部に分布し後者が周辺部に分布することを確認した。また、大神方言の中舌母音については、他の地点の中舌母音と異なり摩擦的噪音の生じない奥よりの調音位置を持つことを、音響分析的手法を併用して確認した。大神方言については、有声閉鎖子音の無声化、歯茎閉鎖子音の軟口蓋化という特殊な子音変化も確認した。 通時的な観点からは、中央部の中舌母音拍が周辺部で単にi母音拍に対応するばかりでなく、種々の特殊な子音拍と対応している点に着目し、中舌母音拍が歴史的により古く、その構音上の不安定さにより、i母音化のほか、成拍子音化、硬口蓋化などの子音変化を生じていることを確認した。 以上の分析を踏まえ、主要な音変化項目を対象として多変量解析(林の数量化理論第III類)の手法を応用することにより、以下の結論を得た。南琉球諸方言は、中舌母音を持ち音韻構造として古態を示す中央部方言郡と、新たな変化を示す周辺部方言郡とに第一次的に分類される。更に前者からは、軟口蓋化を生じるほど中舌母音が奥よりに変化した大神方言が第二次的に分類される。
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