1995 Fiscal Year Annual Research Report
調音可能性と音声連鎖に関する音声学的・音韻論的研究
Project/Area Number |
06610474
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Research Institution | KYUSHU INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
村田 忠男 九州工業大学, 工学部, 教授 (80071653)
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Keywords | 調音可能性 / 音声連鎖 / 音声ハイエラーキ / ソノリティ / 音声学 / 音論論 / 言い誤り |
Research Abstract |
Sound Scope IIという音声分析のソフトウェアを駆使して、音声連鎖を分析してきた。各音声の発音に要した時間等を測定して、調音可能性(または容易性)の度合いを調査した。この作業は、音節構造や音声連鎖の必然性を客観的に示してくれるであろうと考え、音声ハイエラーキ、音節構造に関する普遍的原理等の行き詰まっているように思える研究を促進し、かつ、スピーチ・エラーの解明にも貢献するであろうと予想していたが、多少の成果はあがったように思う。従来のソノリティ・ハイエラーキや音節構造に関連する研究は、例えば[p,t,k]は、閉鎖音として1グループとみなすのが普通であった。ところが、実際にはtのほうがpやkより調音が楽である(少なくとも、短い時間で調音されている)ことを示すデータがえられた。 ただし、日本語の調音可能性の度合いの検出に予想以上に手間取った。閉鎖音などは、音声境界の認定が比較的が容易であったが、摩擦音、流音、鼻音の境界判定に苦労した。例えば、日本音声学会での筆者の発表にも、この手法の意義を認めてくれる方と、強い異義を唱えた方と両方あった。批判には率直に耳を傾け、今後に活かしたいが、いずれにしても、日本語に限らず、もっと多くのデータを分析する必要を感じている。 ことばの言い誤りに、調音可能性の度合いが関係しているという発見も今回の研究成果の1つである。こどもは「からだ」を「かだら」としばしば、言い誤るが、そのほうが、調音が楽であるからと言うのが、要因の1つであるらしい。音声分析装置を使用して、支持的データをかなり得た。心理言語学者の寺尾康との共同研究として、日本言語学会に成果を発表したし、引き続き音声言語処理国際会議でも、発表したいと考えている。
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[Publications] 村田忠男: "調音可能性の度合いと音声の継続時間" 九州工業大学研究報告(人文・社会科学). 第43号. 11-25 (1995)
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[Publications] 村田忠男: "調音可能性の度合いについて" 第9回日本音声学会全国大会予稿集. 86-91 (1995)
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[Publications] 村田忠男: "カプセル英語発音(デジタル音声教材別売り)" 三修社, 55 (1996)