1994 Fiscal Year Annual Research Report
オーストリー法治主義(Legalitatsprinzip)の比較法的研究
Project/Area Number |
06620020
|
Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
高田 敏 大阪国際大学, 政経学部, 教授 (80028000)
|
Keywords | - |
Research Abstract |
「すべての国家行政は、法律の根拠にもとづいてのみ行使され得る。」と定めるオーストリー連邦憲法第18条第1項は、1920年10月1日に成立し、今日にいたっているが、同項を核とするオーストリー法治主義(Legalitatsprinzip)が本研究の対象であり、その成立過程および成立当初の状況が本年度の課題である。 そもそも、同条項成立前において法治主義が制度化されたのは、1867年ということができよう(同年12月21日に五つの国家基本法が成立)。そして、この下の立憲君主制時代においては、基本的にドイツの立憲君主制的法治主義と共通性を有する体制が妥当したといえよう。しかし、すでにその当時の統治権および執行権の行使に関する国家基本法第11条が、後の連邦憲法第18条に繋がる規定を設け、また、当時の学説の中にも、法律によるべき行政の範囲をドイツにおけるよりも広く解するものがみられたこと等、1920年憲法がヴァイマル憲法との顕著な相違を生み出す背景は、立憲君主制時代に存したと考えられる。このことは、1920年憲法の成立に際して、複数の草案(ケルゼン草案だけではなく)が同憲法第18条第1項と同様の規定を用意していたことによっても裏付けられよう。 1920年憲法成立後、第18条第1項の解釈には、ケルゼンを中心とするウィーン学派の純粋法学、法段段説の影響がみられた。しかし、ウィーン学派に属さない者も同項を厳格に解しており、全行政に法律による根拠づけが要求されることは、当時の一般的理解であったことが認められる。
|
Research Products
(1 results)