1996 Fiscal Year Annual Research Report
オーストリー法治主義(Legalitatsprinzip)の比較法的研究
Project/Area Number |
06620020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka International University |
Principal Investigator |
高田 敏 (高田 敏) 大阪国際大学, 政経学部, 教授 (80028000)
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Keywords | 法治主義 / 法治行政 / 法律による行政 / 適法性原理 / Legalitatsprinzip / オーストリー憲法18条 / 法治国家 / Rechtsstaat |
Research Abstract |
本年は、三年にわたるオーストリー法治主義研究の最後の年に当たる。本年度研究実績は、次の三点にまとめることができよう。 まず第一は、1970年代以降のオーストリー法治主義の変化の解明である。すなわち、すべての行政に法律の根拠を要求する連邦憲法第18条第1項については、60年代までは行政に対する法律の授権と羈束が厳格に解されていたが、70年代に入ると、現代行政の複雑多様な展開に対応して、個別的・具体的適法性原理(differenziertes Legalitatsprinzip)や「目的のプログラミング」といった新たな学説・判例が展開し、また80年代以降、私経済行政が憲法18条1項の「すべての行政」から除外される傾向にある。 第二は、このようなオーストリー法治主義の現実化傾向とドイツ法治行政の最近の展開の比較である。ドイツにおいては、伝統的な介入(いわゆる侵害)留保説から、60年代の全部留保説(少数説)を介して、70年代以降の本質性理論へと展開する(近年、新たな展開がみられる)。その結果、両国の法治行政原理には、従来の対照的展開から接近へという潮流を確認できよう。 第三は、日本の法治行政論への問題の提起である。従来の日本の法治主義論は、もっぱらドイツのそれを比較法的検討の対象としてきた。これに対して、私は、立憲君主制から民主制への転換に基礎づけられたオーストリー連邦憲法18条と、現代行政の展開に対応したその柔軟な解釈・運用を参照して、「授権原理説」を提唱したい。 なお、本年度には、ウイーン大学を訪ね、個別的具体的適法性原理の提唱者ヴィンクラ-教授、ウイーン学派の現在の中心的存在ヴァルター教授その他と共同の研究の機会をもち、また、本研究に関する論文のオーストリーでの公刊についても話し合った。 本研究の成果は、モノグラフィー『法治行政論の展開と転回』に収録する予定である。
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Research Products
(1 results)