1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06620022
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 美明 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (20144420)
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Keywords | 管轄権 / 域外適用 / 抵触法 / 米国 |
Research Abstract |
平成7年度は、平成6年度の経済・通商法の域外適用の検討に続いて、さらに広く米国通商法の対外適用事例を検討した。 この結果、米国法の域外適用の問題は一般的な法適用の問題と不可分であり、それはさらに連邦制度のもとでの法適用のあり方という根本問題と密接に関連していることが明らかになった。たとえば、証券取引法や独禁法に含まれるルールのなかでも、詐欺的あるいは不公正な取引を禁止するルールやこれに基づく損害賠償を定めたルールなどは、私法関係を規律するものといえ、経済法の域外適用の理論だけでは割り切れない問題を含んでいる。すなわち、一般的な法の適用関係を定める抵触法理論との関係を分析する必要がある。他方で、米国経済法の域外適用理論は、連邦と州の権限配分の問題とも密接な関係を有する。 以上のような問題は、より一般的には、連邦あるいは州が、どの範囲の事項について、それぞれ規律管轄権を行使できるかの問題と見ることができる。多くの場合、規律管轄権は、強行法規の適用範囲の問題としてあらわれる。ここで、上記の低触法またはより狭くは国定私法との接点が生じる。 米国の経済・通商法の域外摘用を規律管轄権と強行法規の適用理論から検討し、これと抵触法の関係を考察すると、最近のECおよびEUにおける動きとの類似性が見られる。したがって、域外適用の問題の理論的発展のためには、単一の中央集権制をとる日本の国家構造によって無意識に制限されている日本の国際関係法学あるいは政治学の方法論では充分ではなく、米国や西欧の複合国家を真の意味で比較分析できる、総合的な方法論の確立が肝要であると思われる。
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