1995 Fiscal Year Annual Research Report
欧州共同体における制裁-マ-ストリヒト条約による改正をふまえて-
Project/Area Number |
06620023
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
西谷 元 広島大学, 法学部, 助教授 (80208181)
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Keywords | EU / EEC / 経済制裁 / マ-ストリヒト条約 |
Research Abstract |
一九八二年アルゼンチンに対する経済制裁以前、すなわち南アフリカ、ロ-デシア、アフガニスタン侵攻を理由とするソ連、イラン、ポーランド問題を理由とするソ連に対する制裁の事例においては、共同体による制裁を避け、EEC条約第二二四条に基づく加盟国による制裁が行われるか、又は制裁にあたり経済的目的に限定して第一一三条を援用した。アルゼンチンに対する経済制裁以降、EEC条約第一一三条が政治的目的を達成するために援用され得る事が明示的に示された事例であるといえる。 事例以降、共同体は第一一三条における共通通商政策の確定する基準に関し、新たなアプローチをとり、経済的効果を有する措置が第一一三条における共通通商政策に含み得ると解釈することにより、共同体による経済制裁を行った。 マ-ストリヒト条約に基づいて成立した欧州連合においては、共同体加盟国は共通外交安全保障政策をとるが、このような共通外交安全保障政策は、共同体加盟国相互間における体系的な協力により共通の立場をとり、加盟国が重要な共通の利益を有する分野において徐々に共通行動をとることによって遂行される。このような共通政策の中心は、政策の相互通知と協議であるが、EC条約第二二八条aは、EEC条約第一一三条に基づいて共同体が経済制裁を行う権限を有するか否かという問題に対して解決を与えようとするものと考えられる。 しかし、マ-ストリヒト条約が規定した全ての共同体加盟国による共通の立場及び共同行動が、経済制裁に関して第二二八条aにおいて実現され得るかは、第二二八条aに基づいてどのような経済制裁措置がとられるかにもよるが、共同体実行において共通外交政策及び安全保障政策における共通の立場及び共同行動またその基礎となる加盟国間の合意がどの程度達成されるかによる。
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