1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06620031
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福永 惠美子 大阪大学, 法学部, 助教授 (70113587)
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Keywords | 集合動産 / 譲渡担保 / 集合物 / 集合債権 |
Research Abstract |
本研究は、理論的には、一方で、集合動産譲渡担保実行前であっても、動産の集合体を目的物とする一個の担保権としての効力を認めつつ、同時に、一定の範囲で集合物を構成する個別動産の浮動担保性を承認し、第三者との関係で強すぎる集合動産担保権の効力を抑制するという、一見相矛盾する法律効果を合理的に説明することを目的としている。前年度までの研究成果を要約すると、(1)爾後取得動産について新たな行為なくして担保の効力および対抗要件の具備の効果が及ぶこと、(2)爾後取得動産に対する対抗要件具備時期は、個別動産が集合物へ搬入された時点ではなく、担保権が設定され「集合物」に対抗要件が具備された時点まで遡及すること、(3)したがって、また、この点から、債務者の資産状態が悪化していない段階で担保権が設定されているかぎり原則として爾後取得動産についても否認の対象からはずれること、以上の点を合理的に説明するためには、いわゆる「集合物」概念が肯定されるべきであるという点にあった。ただ、動産の集合体を一個の「集合物」として物概念と関連させながら捉えていくとしても、それは観念的便宜的な存在にとどまる。そこで、このような「物」に対して対抗要件を認めていくことための要件を明確にすることが本年度の課題の一つであった。この点については、場所的一体性と個別の物の集合体の価値を越える集合物としての価値の存在が最低必要であることまでは明らかとなったが、前記(2)の効力を認めるために、これらの要件のみで「集合物」性を認定してよいかは、なお検討課題として残されている。第二に、取引実態を解明することが二つめの課題であったが、現在のところ金融機関による取引には使われなくなたという点が明らかとなった。第三に、集合動産譲渡担保においては、集合物を構成する動産の売却代金については譲渡担保権者に物上代位を認めないという結論に達したが、集合物を構成する動産を設定者が第三者に賃貸した場合に、譲渡担保権者に物上代位を認めないかどうかについてはなお研究の継続が必要である。現在研究はまとめの段階にあり、早ければ来年度中に研究成果を単行本として出版する予定である。
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Research Products
(1 results)