1994 Fiscal Year Annual Research Report
借地借家法上の賃料増額請求の理論的・実証的研究-社会法的原理から市民法的視角へ
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06620034
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河内 宏 九州大学, 法学部, 教授 (40037073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 顯治 九州大学, 法学部, 助教授 (50222378)
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Keywords | 賃料増額請求権 / 賃料再交渉権 / 事情変更の原則 / 自由な賃料交渉 |
Research Abstract |
賃料増額請求権は、賃貸人が本来持っていた賃料再交渉権の補償として賃貸人に与えらえた権利である、というのが私の仮説であったが、この点をドイツ法との比較によって証明した。つまり、ドイツ法では、事業用借家と居住用借家とで区別し、事業用借家では更新の自由を認め賃料再交渉権を補償する代わりに、賃料増額請求権が認められていないのに対して、居住用借家では更新の自由を奪い賃料再交渉権を奪ったことの見返りとして賃料増額請求権が認められているということである。また、賃料増額請求権は賃料再交渉権の補償として賃貸人に与えられた権利である、という観点から、賃料が不相当になっても賃料増額請求権の行使のためには一定期間の経過が必要か、という問題に関する最高裁判決の検討を行った。賃料増額請求権は事情変更の原則を成文化した例外的な権利ではなく、賃貸人から賃料再交渉権を奪ったことの見返りとして賃貸人に与えられた当然の権利である、という立場から、賃料増額請求権の行使のためには原則として一定期間の経過は必要ない旨を明らかにした。さらに、オフイスビル、アパート、マンションの賃料に関する実態調査を行った。従来は、賃料を毎年上げるのが当然であったが、バブル崩壊期の今日では、契約更新時に賃料を据え置いたり、逆に値下げをする場合も少なくないと言うことである。その原因としては、バブル期と比べ建築費が下がり、地価が値下がりしていることが挙げられている。このような賃料をめぐる状況下では、少なくとも、事業用借家に関して、自由な賃料交渉を認める可能性は強まっているのではないかと考えられる。
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