1994 Fiscal Year Annual Research Report
多数当事者紛争における民事訴訟の機能の再検討-紛争主体と訴訟主体、利害関係者の訴訟への関与、判決効の拡張および手続保障
Project/Area Number |
06620036
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐野 裕志 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (10145451)
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Keywords | 多数当事者紛争 / 環境権 / 入会 / 当事者適格 / 既判力拡張 / 任意的訴訟担当 / 手続保障 / 判決効の拡張 |
Research Abstract |
1.研究課題について、まず国内の理論状況を確認するための資料・文献の収集および検討を行い、さらに多数当事者が関与したと思われる判例の事案を分析し、そこでの問題点を確認した。特に近時の環境訴訟あるいは入会をめぐる訴訟の若干例について、事実関係を中心として詳細な検討を行った。この基礎作業を進める一方で比較法的研究も進め、英米・独仏などの資料の収集を行い、他国の制度では多数当事者紛争をどのように処理しようとしているのかを検討した。併せて、他国の裁判例も、若干ではあるが、判例集を手がかりにして、検討を行い、実際上の問題点を明らかにした。 2.すなわち、主観的に広がりのある多数人を含む紛争(多数当事者紛争)においては、紛争主体の数だけ紛争があり、したがって複数の訴訟がまとめて処理される現象であると伝統的には理解されてきたが、むしろ利害関係者は多数いるが中心となって争ってきている者はわずかであるというのが、紛争の実状であり、中心になっている者だけを当事者として扱い、ほかの者はその当事者に訴訟追行をゆだねているとみて、訴訟を規律するほうが実体にあっているような紛争が多いことが明らかとなった。すると紛争の中核にいるものだけを当事者として訴訟に関与させ、そのものの受けた判決の効力を残りの者全員に及ぼす方式の方が、事件の実体に則していることになる。 3.そこで、次年度に向けて、どのような紛争の実体があればこの方式がとれるのか、紛争においてどのような地位についている者を訴訟主体にすべきか、多数いる利害関係者の内どの範囲の者を訴訟に取り込むのか訴訟上どのような地位を与えればよいのか、あるいは判決の効力を受ける者に対して手続保障はどうあるべきかなどを検討する。
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