1995 Fiscal Year Annual Research Report
犯罪行為者を対象とする刑事政策と社会福祉の相互連携に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
06620043
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 政和 九州大学, 法学部, 教授 (30188841)
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Keywords | 犯罪者援助 / 更生保護 / 矯正と保護の相互連携 / 社会的援助 / 司法福祉 / 行刑 |
Research Abstract |
本研究は、刑事司法システム全体の中で、社会福祉との関連性を追求し、実証的研究を踏まえて、刑事政策学の理論的再構成をするために、第一に、歴史的研究としては、戦後日本における更生保護制度の展開を行刑および社会福祉政策との関連で分析すること、また、比較法的研究では、アメリカ、ドイツ、北欧やイギリスとの比較研究をおこなうこと、第二に、実証的研究によるわが国の実態分析やそれを踏まえた具体的な政策提案を行うこと、第三に、それらの総合的研究に基づいて、刑事政策と社会福祉政策との自律性と連携について理論的検討をおこなうこと、を課題としている。今年度は、ドイツにおける少年犯罪に関して、ミュンヘン大学のシェッヒ教授から、その実情と背景について話を伺う機会を得た。また、少年手続きにおけるダイヴァージョンの過程、特に警察の段階で社会福祉機関との連携が計画され、議論を呼んでいることは、わが国との比較検討において興味深い。ドイツでは、少年裁判所法第一次改正でダイヴァージョンと社会内処遇が推進されることになったが、その実務運用上の問題点も生じてきている。それは、警察などの権力的統制機関と社会局などの社会福祉機関との連携の在り方、行政上の裁量の妥当性という、本研究の理論的側面としてもっとも重要な問題を提起している。現在、ドイツ少年警察とダイヴァージョンに関して更に研究を進めているところである。また、実務家からの聞き取り、あるいは、文献調査から明らかになりつつあるのは、市民のボランティア組織およびその活動は刑事政策においてどのように位置付けられるべきか、という問題である。犯罪を行った者の社会復帰あるいは犯罪や非行の防止活動において市民の役割も軽視し得ないが、この市民の活動が、ボランタリーな性格を失うことなく、自立的に、国家機関といかなる連携をもつべきか、が今後検討されねばならない。
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