1995 Fiscal Year Annual Research Report
近代自然法学とアダム・スミスの経済理論および国家論の比較研究
Project/Area Number |
06630007
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
新村 聡 岡山大学, 経済学部, 教授 (00167561)
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Keywords | 近代自然法学 / 古典派経済学 / プ-フェンドルフ / アダム・スミス / 分業 / 市民社会 / 社会契約説 / 貨幣数量説 |
Research Abstract |
1.近代自然法学(グロチウス、ホッブズ、プ-フェンドルフ、ロックら)と古典派経済学(アダム・スミス、J.S.ミル)およびマルクスにおける分業・協働・所有に関する理論を比較検討し、当該理論の17-19世紀における発展を段階的に整理した。とくに明らかになったのは、分業・協働・所有の超歴史的側面と歴史的側面とを二重化して把握する視角が、17世紀のプ-フェンドルフと19世紀のミルやマルクスとに共通し、両者の間にはさまるロックやスミスでは歴史的側面の把握が後退するという点である。 2.ロック、ヒューム、ステュアートらの「貨幣数量説」の発展を整理し、アダム・スミスの『国富論』第1巻末尾における「銀価の変動に関する余論」と比較して、後者がスミスの貨幣数量説(あるいは貨幣数量説批判)として位置づけられることを明らかにした。 3.近代自然法学の社会契約説に対するヒュームとスミスの批判を考察し、とくにスミスの『法学講義』から『国富論』へいたる国家論の発展を社会契約説批判の展開という視角から検討した。『国富論』における社会契約説批判は、従来の研究史でほとんど注目されてこなかった点である。 4.ヨーロッパと日本における市民社会概念の展開を検討した。とくに日本における戦前の高島善哉・大河内一男から戦後の大塚久雄、内田義彦、平田清明、望月清司らに至る市民社会論および市民社会概念の発展を、日本資本主義の展開と関連づけて考察し、その成果を研究大会で報告したあと論文「戦後日本の社会科学と市民社会論」にまとめた。
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