1996 Fiscal Year Annual Research Report
近代自然法学とアダム・スミスの経済理論および国家論の比較研究
Project/Area Number |
06630007
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
新村 聡 岡山大学, 経済学部, 教授 (00167561)
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Keywords | 近代自然法学 / 古典派経済学 / 貨幣数量説 / アダム・スミス / 社会契約説 |
Research Abstract |
1)いわゆる機械的貨幣数量説は、ロック→モンテスキュー→ヒューム→リカード→ジェームズ・ミル→通貨学派→新古典派という系譜をもつ。これに対して二つの批判的な系譜が存在した。一つはいわゆる連続的影響説であって、カンティロン→ヒューム→アトウッド→ハイエク→ケインズとつながり、もう一つはいわゆる流通必要量説であって、ステュアート→スミス→トック→銀行学派→マルクスへとつながる。ケインズとマルクスはいずれも古典派経済学者の貨幣数量説・貨幣ヴェール観・セ-法則を批判して重商主義の貨幣的経済理論の意義を高く評価したが、しかし両者の貨幣数量説批判は微妙に重なり合いつつも重要な点で大きく異なっていた。本研究は、それぞれについて理論的系譜をたどって整理した。 2)上記の系譜の中で、アダム・スミスの『国富論』第1巻末尾における「銀価の変動に関する余論」は、ロック、ヒューム的な機械的貨幣数量説とステュアート的な貨幣数量説批判とを(後者に重点を起きながら)理論的に総合しようとしたものと考えられる。このスミスの認識が、『法学講義』や『国富論草稿』以来しだいに発展してきたことを明らかにした。 3.近代自然法学の社会契約説に対するヒュームとスミスの批判を考察し、とくにスミスの『法学講義』から『国富論』へいたる国家論の発展を社会契約説批判の展開という視角から検討し整理した。
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