1994 Fiscal Year Annual Research Report
スコットランド啓豪における自然神学と社会科学の生成-市場社会認識の端緒-
Project/Area Number |
06630013
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Research Category |
Grant-in-Aid for General Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
有江 大介 横浜国立大学, 経済学部, 助教授 (40175980)
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Keywords | 啓豪思想 / スコットランド / 自然神学 / 社会科学 / 市場 / 経済 / 国富論 / スミス |
Research Abstract |
6年度は、17世紀後半から18世紀前半にかけての神学上の論争のうち、社会科学の成立関連するデザイン論と自由・必然論、およびこの議論にかかわる時間・空間論の検討を行った。 具体的には、まず、(1)社会科学成立の神学的背景として英国理神論をジョン・ト-ランド『キリスト教は神秘的ではない』(1696)とその匿名批判書の分析を通じての検討である。次に、(2)アダムス・スミスの『国富論』に至る社会の経済的把握の発展を、スミスの自然神学の内容、同時代の知的環境の両面から検討した。 学会等では、6年7-8月に、ケンブリッジ大学での歴史サマーセミナーの啓豪思想のコースに参加し、当時の西欧全般の知的状況を概観するとともに、エディンバラ大学図書館において18世紀スコットランドの神学論争についての文献調査を行った。また、6年10月の社会思想史学会全国大会では、ヒュームとスミスのセッションにおいて「田中正司『アダムス・スミスの自然神学』をめぐって」と題する報告、7年1月には横浜6大学学会連合経済学史部会にて「理神論と社会科学--ト-ランド『キリスト教は神秘的ではない』をめぐって--」と題する報告を行った。発表論文では、裏面のリストにあるように、スミスの経済学形成に関わる論考、ト-ランドの理神論に関わる口論を紀要等に掲載し、わが国の研究史の空白・弱点を埋めるという意味において、それぞれ当該分野研究の発展に貢献した。 7年度は、6年度の研究成果と科学研究費によって購入した文献・資料、および同費による資料整理等をふまえて、よりスコットランドに焦点を絞った研究、すなわちケイムズ・ヒューム・スミスをめぐる社会科学成立史を検討する予定である。
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