1994 Fiscal Year Annual Research Report
戦時期の日本企業の外国人労働者労務管理の特質の実証的解明
Project/Area Number |
06630058
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
市原 博 城西国際大学, 経営情報学部経営情報学科, 助教授 (30168322)
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Keywords | 強制連行 / 強制労働 / 在日朝鮮人 / 外国人労働者 / 戦時労務管理 |
Research Abstract |
戦時期の朝鮮人労働者の募集・調達方法は、自由募集から官斡旋、そして徴用へ時期的に変遷し、それに伴いその強制性が増大したといわれている。しかし、自由募集期にも日本企業による朝鮮人労働者の募集は多くが官斡旋の形式で行われており、その強制度において官斡旋期と大差はなかった。当初から官斡旋方式をとったのは、日本企業の募集能力不足につけこんだブローカーによる弊害の排除と、労働市場統制上の必要性を理由としていた。その後一元的な官斡旋方式に移行したのは、現地役所による斡旋決定に付随した不効率さの解消を目的としていたのであり、労働力の枯渇に対応した強制的な労働力調達方式への移行という通説的理解は不適切である。 朝鮮人労働者の性格は業種により大きく異なった。重工業部門で稼働した朝鮮人労働者は教育・知識水準も相対的に高く、より高度な教育や技術の獲得を目的に募集に応じたものが少なくなかった。それに対して、量的に多かった炭鉱・鉱山部門で稼働した者たちは無教育者がほとんどで、郷里の家族への送金のみを目的とし、自己の能力開発や仕事での自己実現といった積極的な姿勢を持たないものが多かった。このことが朝鮮人に対する労務管理担当者の評価に悪影響を与え、ひいては朝鮮人全般に対する日本人の悪しき蔑視感情を強めた可能性がある。 炭鉱・鉱山部門だけを見ても、企業によりその労務管理に大きな違いがあった。教育を重視し、朝鮮人労働者を日本人と同等の労働能力を持つ者に育て上げて活用しようとする企業と、彼らの潜在的能力を評価せず、短期的な非熟練労働者としてのみ使役し、抵抗には暴力で対処する企業があった。しかし、前者の企業の労務管理担当者も朝鮮人の生活慣習や行動様式を理解することはできず、蔑視感から自由にはなれなかった。来年度は中国人労働者に関して分析する計画である。
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