1995 Fiscal Year Annual Research Report
わが国における法人税と個人所得税の負担調整のあり方に関する研究
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06630076
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
馬場 義久 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (80148022)
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Keywords | CBIT法 / 伝統的統合方法 / 法人税 / インピュテーション / 包括的所得概念 / 課税の中立性 |
Research Abstract |
本年度の研究によって以下の知見を得た。1.株主の限界税率で課税しようとする伝統的統合方法-完全統合法・インピュテーション法・支払い配当控除法-については以下の限界を指摘できる。(1)課税投資家について、超過累進税率構造を前提とした場合、資金調達の選択に関する課税の中立性を達成するのは完全統合法のみである。他の二方式では限界税率が一定でtm=tg(1-c)+c(tm:配当税率、tg:キャピタルゲイン税率,c:法人税率)が成立しなければならない。これら二方式の根底にある包括的所得概念による累進課税論を前提とすると、以上の税率構造に関する制約は厳しく中立性の達成は困難である。こられの方法では配当・利子については投資家の限界税率で課税されるが、留保部分に対しては均一な法人税率が課されたままで負担調整がなされていないからである。(2)非課税投資家を想定すると、三つの方法とも課税の中立性確保と税収保持という要請が二律資反関係に陥る。伝説的方法は完全利子控除によって中立性を達成するからである。 2.これに対しCBIT法(包括的事業所得税法)は(1)課税投資家・非課税投資家を通じて、同一の課税ルールによって課税の中立性を達成できる。企業段階での利子控除否定により利子・留保・配当に一律課税できるからである。(2)単なる企業段階での一律源泉課税であるため税務執行が容易である。(3)包括的所得概念を基礎にした公平概念によっても、非課税組織に資金を提供している担税力ある投資家に課税できる点で伝統的方法より優れている。 3.したがってわが国でも、伝統的方法の採用を当然視するのではなく、CBIT法の適用を本格的に検討すべきである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 馬場 義久: "再考:法人税と個人所得税の統合問題" 早稲田政治経済学雑誌. 323号. 293-319 (1995)
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[Publications] 馬場 義久: "法人税と個人所得税の統合問題-企業の資金調達に注目して-" 租税研究. 552号. 5-12 (1995)
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[Publications] 馬場 義久: "伝統的統合方法と包括的事業所得税法" 早稲田政治経済学雑誌. 325号. (1996)