1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06630077
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
伊多波 良雄 同志社大学, 経済学部, 教授 (60151453)
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Keywords | 地方財政システム / 地方財政 / 地方分権 |
Research Abstract |
本研究は理論的研究と実証的研究(聞き取り調査など)の二つの部分からなっている。理論的研究においては、内外の諸文献をサーベイすることによって二つのタイプの地方分権があり得ることが知見として得られている。第1のタイプは、地方分権した場合これに伴い発生する非効率性(地域公共財の地域間のスピルオーバーなど)を排除するものとして地方財政システムを捉えるものである。第2のタイプは、すべての権限を地方政府に委譲した場合、地方分権に伴う非効率性は地方政府の行動によって排除されるというものである。これには、Myers(J.Pub.E.,1990)とVarian(A.E.R.,1995)によって示された議論がある。前者は、ナッシュ均衡においては地域公共財の決定および地域間の所得移転(いわゆる補助金)を地方政府の権限に委ねた場合、パレート最適な均衡状態が得られるというものである。また、後者のVarianの議論は、地方分権に伴う非効率性はCompensation Schemeと言われるメカニズムを通じて、地方政府間の相互作用によって排除されるというものである。第2のタイプの地方分権の考えによれば、地方財政システムは不必要になる。これは極めて興味深いが、今後理論的な検討がよりいっそう望まれる。 実証的研究においては、3つの自治体(京都府、三重県青山町と愛媛県久万町)を訪問し、首長に直接会い、聞き取り調査を行った。その結果、都道府県レベルでは地方分権の議論がかなり進んでいる反面、町村レベルではそれほど重要視されていないこと、地方分権を推進する場合、いわゆる「受け皿」が極めて重要であることなどが知見として得られた。
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