1996 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640366
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
高塚 龍之 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (50043427)
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Keywords | 中性子星 / 冷却機構 / 超流体 / π擬縮相 / K擬縮相 / 多陽子混在相 |
Research Abstract |
近年の観測面での進展と冷却理論から,中性子星内部状態について,(1)標準冷却機構(修正URCA過程)よりもずっと速い冷却機構をもたらす「新物質相」の存在,と同時に(2)この新物質相で核子系が「超流体」になっていること,の2つの必要性が暗示されている。本研究では,今年度までに,新物質相としてK擬縮相と多陽子混在相をとりあげ,これらの相で超流動が可能なのかどうかを検討してきた。今年度はπ擬縮相に焦点をあて,その典型例として,荷電π(π^c)擬縮の場合と中性π(π^c)擬縮の場合を検討した。以下に主な実績を要約する。 (1)核物質の相対論的扱いがもたらす多陽子混在相が速い冷却機構と関連して注目されているが,この相では,核子系超流動は望めないという結果を得た。数値結果は前年度に得られていたものであるが,今年度の前半期に論文としてまとめ発展した論文No.1)。 (2)π^c擬縮相の場合:核子系は準粒子基底(中性子と陽子の重ね合わせ)で記述されるため準粒子の対相関という新しい課題となる。この状況に照応したBCS理論の拡張を行い、準粒子対相互作用の特徴として,(イ)通常のn-n成分からくる^3P_2対相互作用の弱まり(attenuation),(ロ)一方,n-p成分の^3P_2運動学的因子をもつ状態からの引力付加,という2つの効果を明らかにした。(イ)と(ロ)は相補的で,その結果,準粒子間の^3P_2対相互作用はπ擬縮の無い通常の場合と殆ど変わらず,核子系超流体は約3ρ_0(ρ_0)は通常核密度)まで存在しうるという結果を得た(論文No.2)。 (3)π^0擬縮相の場合:核子系はスピン秩序を伴った層状構造(ALS構造)という激的変化をうけ,対相関は2次元フェルミガスでのク-パ-対という特質をもつ。核物質での低次元超流動という新しい内容に適合した対相関理論をアイソバ-Δ(1232)の効果を含めて定式化した.Δの効果は核子系基底をnとΔ^0からなる準バリオン(B)へと拡張し,SU(4)クォークモデルに基づき,NN相互作用をBB相互作用へと一般化することによりとり入れる。準バリオンの対相互作用は通常の^3P_2成分に加えてΔ-mixingによる付加項をもつが,後者は引力的効果となり,結果として超流体の存在域は通常の場合よりも高密度まで延びることがわかった。(論文投稿中)
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[Publications] T.Takatsuka: "Nucleon Superfluidity in Neutron Star Core with Diret URCA Cooling" Progress of Theoretical Physics. 97・2. 345-350 (1997)
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[Publications] T.Takatsuka: "Effects of Charged-pion Condensation on Neutron on ^3P_2 Superfluidity" Progress of Theoretical Physics. 97・2. 263-281 (1997)