1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640372
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宇川 彰 筑波大学, 物理学系, 教授 (10143538)
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Keywords | 素粒子物理学 / 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
平成6年度前半には、Kogut-Susskind型クォーク作用を用い、平成5年度に開発済みの新しいハドロン多点グリーン関数計算法をK->ππ崩壊振幅に応用してその計算可能性を検討した。その結果、この方法によっても当該行列要素に特有の極めて大きな統計揺らぎを制御することは困難なことが判明した。この点の改善には計算力の飛躍的増大が必要であり、KEKのVPP-500/80の本格稼働後に再検討を行なうこととした。この問題については、年度後半に、平成7年度に向けて、Clover型クォーク作用による計算の準備を開始し、小規模格子でのハドロン質量計算を実行している。 上記多点グリーン関数計算法は、π-Nシグマ項、陽子スピンに対する各クォークの寄与分の大きさ等、以前から実験的にも理論的にも議論の多い核子行列要素の計算にも有効と考えられる。年度半ばから後半にかけてはこれら二つの量の計算を行い、その結果、sea quarkの寄与を初めて精度良く計算することに成功した。π-Nシグマ項については、sea quarkの寄与がvalence quarkの寄与の2倍程度あること、陽子スピンに対するクォークの寄与分については、sea quarkの寄与は負であり、その大きさはvalence quarkの寄与の10%程度であって、クォークの寄与の総和は0.2-0.3であること等、実験結果の現象論的解析と整合する興味ある結果を得た。これらの量の量子色力学第一原理に基づく計算は計算法上の困難のため進歩の滞っていたところであり、我々の結果は現在までのところ最良のものといえる。VPP-500によれば計算精度を格段に上げることは充分可能であり、この意味でこれらの量についての格子量子色力学による最終的解決の目度がついたものと考える。
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[Publications] Y.Kuramashi: "N'meson mass in lattice QCD" Physical Review Letters. 72. 3448-3451 (1994)
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[Publications] M.Fukugita: "An exploratory study of nuclecn-nucleon scatteving leugth in lattice QCD" Physical Review Letters. 73. 2176-2179 (1994)
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[Publications] S.Aoki: "Manifestation of sea quark effects in the strong csupling constant" Physical Reuew Letters. 74. 22-25 (1995)
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[Publications] M.Fukugita: "Pion-nucleon sigma ferm in lattice QCD" Physical Reuew D. (発表予定). (1995)
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[Publications] M.Fukugita: "Lattice QCD solution to be Ц(イ)problem" Physical Reuew D. (発表予定). (1995)