1994 Fiscal Year Annual Research Report
中性子転換注入法でリンをドープしたポリシラン量子材料の半導体物性
Project/Area Number |
06640441
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松山 奉史 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (50027463)
|
Keywords | 中性子転換注入法 / リンドープポリシラン / ポリシラン量子材料 / n型ポリシラン半導体 / 低次元系半導体 |
Research Abstract |
本年度研究の対象として試みたポリシラン試料はポリメチルフェニルシラン(1次元)およびポリフェニルシラン(2次元)である。これらのフイルム状固体試料には不純物としてNaClが含まれており、主要な目的としているリンの中性子転換注入を行なう際にはこの不純物の放射化が実験遂行の障害になるという問題がある。この不純物を低減化することにより、できるだけ高純度の試料を得るための方法で探索することが本年度の課題の一つであったが、フイルム調整時に用いる溶媒を選択し溶融回数をコントロールすることにより、NaClを容認できる程度まで除去できる見通しが得られた。 ポリシランにリンをドープして半導体化するため、本研究では原子炉中性子による核反応^<30>Si(n,γ)^<31>Siとこれに引き続くβ崩壊^<31>Si→^<31>Pというユニークな手段を用いるが、原子炉中性子場は中性子以外にγ線などの強力な放射線が存在する混合放射線場であるため、これらの放射線がポリシランを分解する懸念がある。特に^<30>Siは天然存在比が約3%という少なさであるから、必要なリン量をドープするためには原子炉照射の時間が必然的に長くなり、この点からの試料分解の懸念は深刻である。したがって、γ線など中性子以外の放射線がポリシランに与える影響を調べることも本年度の課題の一つにしたが、今のところγ線による分解の効果がかなり大きいという結果を得ている。しかしながら、その効果は2次元試料に対しては1次元試料に比べると小さいので、主に2次元試料を用いγ線量率の低い照射場を選ぶことによってこの問題はある程度克服できるものと考えており、次年度でも継続して行なうべき課題とする計画である。
|