1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640445
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
野上 由夫 岡山大学, 理学部, 助教授 (10202251)
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Keywords | 中性イオン性転移 / 低次元物質 / 分子二量体化 / スピンパイエルス転移 / 構造相転移 / 電荷移動錯体 |
Research Abstract |
中性イオン性転移は温度降下や圧力印加により、交互積層した、中性のドナー(D)分子から中性のアクセプター(A)分子へ、電荷移動を生じ、イオン性結晶へと相転移を起こす現象である。中性イオン性転移はこれまで、以下のモデルで理解されてきた。すなわち、電荷移動には、格子収縮によるマ-デルングエネルギーの増加が関わっている。電荷移動に伴い、イオン性相では個々の分子の電子構造は開核になりスピンを持つ。このスピンには一次元スピンパイエルス不安定性が働き、分子二量体化を起こしてスピンは一重項状態になる。前段の電荷移動はすでに検証されているが、後段の分子二量体化は、半定性的な傍証はあるものの,具体的な分子変位は全くわかっていなかった。 本研究では、中性イオン性転移を起こす二種類の錯体TTF-CAとDMTTF-CAについてX線としては世界に先駆けて低温構造解析に成功した。その後X線圧力下測定技術を開発し,DMTTF-CAについて圧力下測定もおこなった。TTF-CAとDMTTF-CAを微視的にみると,イオン性に転移する部分では,分子二量体化の変位量、電荷移動量の変化量に共通点を見いだした。これは両錯体が一次元方向に良く似たDA交互積層構造を持つためであると考えられる。しかし、巨視的にみると,TTF-CAは低温で、試料全体がイオン性になりP2_1/nからPnに空間群が変化し強誘電体となるが,他方DMTTF-CAは低温では、電荷移動も二量体化もない中性部分と、両方ともあるイオン性部分が混在していることがわかった。これは、一次元鎖間の静電的相互作用によるものとして理解できる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Y.Nogami他5人: "Structural Study of Neutral-Ionic Transition in DMTTF-CA" Synthetic Metals. 70. 1219-1220 (1995)
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[Publications] Y.Nogami他7人: "X-Ray Structural Study of Neutral-Ionic Transition in Tetrathiafulvalene-p-Chloranil (TTF-CA) and Dimethyltetrathiafulvalene-p-Chloranil (DMTTF-CA) -Ferroelectricity in Organic ChargeTransfer Complex-" Journal of Physical Society of Japan. (発表予定).