1994 Fiscal Year Annual Research Report
βカロチンを中心とする直鎖共役系ポリエン分子の光物性と電子状態に関する研究
Project/Area Number |
06640457
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
国府田 隆夫 日本女子大学, 理学部, 教授 (50010715)
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Keywords | 有機物質の光物性 / π電子共役系物質 / 分子エレクトロニクス / 有機非線形光学材料 / 有機薄膜 |
Research Abstract |
炭素原子が、一重、二重結合の交互繰り返し構造[-CH=CH-]を単位として直鎖状に繋がった分子を共役系ポリエンと総称する。本研究では、代表的なポリエン分子として、βカロチン(繰り返し数N=11)、オクタテトラエン(N=8)、ヘキサトリエン(N=6)、ブタジェン(N=4)を対象として、そのπ共役電子状態の性質を各種の光学スペクトルの測定によって詳細に解明することを目的としている。2年間にわたる研究計画の初年度として、まず、これらのポリエン分子の溶液について、吸収、発光、発光励起スペクトルの測定を行った。βカロチン以外のポリエン分子は溶液状態で明るい発光(ルミネセンス)を示し、その励起スペクトルから、発光に関与している最低励起状態が禁制^1A_g状態であることが確認された。設備備品として購入した光チョッパー、電流入力プリアンプは、これらのスペクトル測定のための分光装置の部品として使用されている。溶液試料以外に、結晶状態でのポリエンの励起子状態の性質を調べる目的で、上記のポリエン分子の薄膜試料の作製を試みた。βカロチンについては、ガラス基板上にスピン・キャスト法によって作製された薄膜が、きわめて高い品質のものであることが確かめられた。このβカロチン薄膜を使用して、低温における電場変調吸収スペクトルの測定が行われた。その結果、許容励起状態(^1B_U励起子)による変調信号のほかに、吸収構造には対応しない変調信号が検出され、電場によって禁制が解かれた^1A_g励起子によるものと同定された。この状態は、ポリエン分子の示す大きな3次非線形光学応答の中間状態として重要であることが知られているが、それが実験的に確認されたのは、この研究が最初の例である。βカロチン以外のポリエンの薄膜作製では、スピン・キャスト法が有効ではなく、真空蒸着法により作製された薄膜の構造評価と、蒸着条件の最適化の努力が行われている。
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[Publications] 国府田 隆夫: "Electro-modulation spectroscopy on excitons in β-carotene and related polyenes" synthetic metals. (印刷中). (1995)
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[Publications] 岩田 英夫: "Electric-field-induced second-harmonic generation mediated by one-dimensional excitons in polysilanes" Physical Review B. 50. 7786-7792 (1994)
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[Publications] 長谷川 達生: "Honlinear Optical Study of polysilanes" J.Phys.Soc.Japan,Suppl.B. 63. 64-81 (1994)
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[Publications] 国府田 隆夫: "ポリシランとポリエンの励起子分光" 理化学研究所フォトダイナミクス研究センター・光反応フォーラム「ポリシランとポリエンの新物質科学」. 9-10 (1994)