1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640502
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
笹井 理生 名古屋大学, 人間情報学研究科, 助教授 (30178628)
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Keywords | 水素結合 / 自己秩序臨界状態 / 1 / f ゆらぎ / 分子乱流 |
Research Abstract |
ネットワーク構造を格子上の0または1の変数で表した動的モデルを構築し、分析した。その結果、(a)ネットワークの組み替えは単純な指数型緩和ではなく、少なくとも3けたの周波数範囲に渡って、1/fゆらぎの特徴を持つ。(b)ネットワークの組み替えが盛んに起こる領域は局在していて、時間とともにその領域は変化、移動する。(c)ネットワーク構造の空間的変化の規模は階層的な分布をしており、小規模で頻繁な変化と大規模でまれな変化が共存している。(d)氷に近い秩序が発達しかけたり、消えたりする揺らぎがネットワークの大規模な構造変化とエネルギーの長時間変化の原因になっている。などの知見が得られた。これらのネットワーク運動のパターンが溶質の運動におよぼす影響、溶質間相互作用に及ぼす影響の分析を行うための模型が開発され、基礎的データが集められた。 上述の格子模型の結果が分子動力学計算と比較され、分子動力学計算において1psから3ps程度の時間間隔で、氷に近い局所的構造が発達し、また崩壊する、という構造の形成と崩壊のパターンが確認された。局所構造指数という新しい量が定義され、この構造発達と崩壊の時間空間パターンが定量的に分析された。その結果、(a)構造が発達した分子は集まってクラスターを作っているが、このクラスターはパーコレーションモデルで考察された4本の水素結合を持つ分子のクラスターとは場所、形ともに異なる。(b)構造が発達した分子クラスターは、常温、常圧では線、または面のつながりをもち、大きな塊になることは少なくない。(c)構造が発達した領域では1ps程度の周期の構造変化が特徴的に見られ、ラマンスペクトルに現れる40cm^<-1>程度のピークに相当すると考えられる。構造が発達した場所でのみ、この振動が観測されることはラマンスペクトルから推察された2状態描像とコンシステントである。などの新しい知見が得られ、ネットワークの揺らぎを理解するための新しい切り口が得られた。
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[Publications] 笹井理生: "Conformation,Energy,and Folding Ability of Selected Sequences" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. (発表予定).
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[Publications] 笹井理生: "The Random Graph Models of Metastable Liquid Water" Prof Int.Conf.on Properties of Water and Steam. (発表予定).