1994 Fiscal Year Annual Research Report
HOPG表面に吸着した希ガスにおける陽電子寿命の研究
Project/Area Number |
06640516
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東 俊行 東京大学, 教養学部, 助手 (70212529)
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Keywords | 陽電子消滅 / 陽電子ビーム / 陽電子表面状態 / オージェ電子分光 |
Research Abstract |
パルス式エネルギー可変の陽電子ビームを用いて、今まで不可能であったHOPG表面上での陽電子寿命スペクトルの直接的測定を行い、はっきりと陽電子が表面に止まっていることが明らかな条件下で、不純物原子を吸着させた場合の陽電子表面束縛状態の変化を観測しようとした。 まず希ガスを吸着させずに、陽電子消滅を利用したオージェ電子分光(Positron Auger Spectroscopy)を行った。この、陽電子オージェ電子分光は、陽電子が表面上の原子内の内核電子と対消滅することによってできた空孔へ外側の軌道電子がへ落ちると同時に真空中へ飛び出すオージェ電子を検出するものである。その結果、HOPGの構成原子である炭素原子によるものとともに、電子線によるオージェ電子分光では確認されなかった酸素原子による信号が、はっきりと確認された。酸素の信号は高温にすると陽電子寿命が短くなり、さらに真空中へ放出されるポジトロニウム量も増大することとはっきり相関があり、いままで表面での陽電子の挙動の温度温度依存性がはっきりしていなかったのは、実は、通常のオージェ電子分光の検出限界以下の吸着物のためであるらしいことがこれで明らかになった。 陽電子オージェ電子分光によって、実用上有意義である酸素原子等の軽い原子が測定可能なのは、ビーム強度の問題からパルスビームを利用しているこの研究のみである。これは表面診断のプローブとしてこの手法が非常に有力であり、この方法によって、通常の電子線オージェ分光などで検出できない超低濃度の不純物の検出が可能であることを示唆している。 平成7年度には、さらに発展させ、実験チェンバーのより一層の超高真空化をはかり、グラファイト表面に、制御された量の酸素、一酸化炭素、水等のガス原子、分子を吸着させた場合の変化を陽電気オージェ電子分光によって観測したい。これと同時に陽電子寿命測定、陽電子・電子対消滅ガンマ線のエネルギー広がり及び陽電子寿命の長寿命成分の測定を行い、表面束縛状態の陽電子および真空に飛び出すポジトロニウムの生成量も観測したい。
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