1994 Fiscal Year Annual Research Report
二枚貝類マルスダレガイ科の殻体構造およびアイソザイム分析にもとづく種分化の研究
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06640593
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島本 昌憲 東北大学, 理学部, 助手 (30211965)
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Keywords | 二枚貝 / 殻体構造 / アイソザイム / 遺伝距離 / 系統発生 |
Research Abstract |
1.化石種の殻体構造について これまでの研究により、二枚貝類マルスダレガイ科に属する種のなかで、カノコアサリ亜科、カガミガイ亜科、リュウキュウアサリ亜科、マツヤマスレガイ亜科の種は化石記録も比較的豊富で、かつ殻体構造の変異も大きいので、これらの亜科を中心に化石種の殻体構造を観察した。地質時代から現在まで生存している種では現世標本で観察される殻体構造と化石標本で観察される殻体構造に差はなく、殻体構造は同一種においては時間的変異のない形質であることが確認できた。しかしながら、絶滅種には現世種で見られない殻体構造を持つ種も認められ、それらの変化パターンには幾つかのタイプがあることが判明した。カノコアサリ亜科では、交差板構造の分泌が抑制される傾向が認められ、カガミガイ亜科、リュウキュウアサリ亜科、マツヤマワスレガイ亜科の一部の種では、より原始的な構造をもつものが見られた。 2.代謝系酵素のアイソザイム分析および殻体構造との関係について 同属内において異なるタイプの形体構造の見られるカノコアサリ亜科ビノスガイ属の種について、日本周辺および北米大陸沿岸域より産する標本を詳しく検討した。その結果、日本産および北米産の種ではそれぞれの地域に分布する種間で遺伝距離が小さく、系統的に近縁であるという結果が得られ、絶滅種も含めて殻体構造も共通していることが判明した。一方、日本産の種と北米産の種の間では遺伝距離はやや大きく殻体構造も異なっている。これより、殻体構造が遺伝的近縁性をよく反映する重要な形質であることが判明し、今後より多くの種について検討する意義がさらに高まった。
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