1994 Fiscal Year Annual Research Report
同位体から見たアジア大陸起源硫酸イオンの日本への長距離輪送
Project/Area Number |
06640632
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
佐竹 洋 富山大学, 理学部, 教授 (40134994)
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Keywords | 非海塩性硫酸イオン / 硫黄同位体比 / アジア大陸 / 長距離輸送 |
Research Abstract |
北陸地方にある富山市において一ケ月毎に降水を採集し、その化学成分と、降水の酸素・水素同位体比を測定した。また、降水中の硫酸イオンを硫酸バリウムとして回収し、その硫黄同位体比の測定も行った。その結果、富山の降水中の非海塩性硫酸イオンの濃度は春・夏には2〜3ppmであったが、9月から上昇を始め、冬期には5〜7ppm程度にまで達した。一方、非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比は、5月〜9月は-0.04〜1.24%_0であったが、冬期には1月の4.22%_0を最高に2〜4%_0の範囲にあった。アジア大陸の石炭中の硫黄の同位体比は4〜6%_0程度と報告がなされており、富山の冬期の硫黄同位体比の上昇は、アジア大陸起源の硫酸イオンの寄与があることを示している。このように富山において、冬期にアジア大陸からの硫酸イオンの長距離輸送があることが、硫黄同位体比の面からも裏付けられた。また冬期以外の1%_0以下の硫黄同位体比は国内の石油中の硫黄によるものと考えられる。富山の対照として、同様にアジア大陸の近傍に位置する、沖縄県の石垣島においても一ヶ月毎に降水を集め同様の成分について分析をおこなった。石垣島では年間を通じて非海塩性の硫酸イオンの濃度は1〜2ppmと一定であった。この事は大陸からの寄与を受けてないように見られたが、非海塩性硫酸イオンの硫黄同位体比は4〜6%_0と年間を通じて一定であった。この4〜6%_0という値は富山の冬期と同様にアジア大陸の寄与を示している。石垣島では年間を通してアジア大陸の影響があることがうかがわれた。このように北陸地域以外に対照観測地点を設けたことにより、北陸地方の大陸からの輸送状況の特徴を、より一層明確にすることができた。
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