1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640640
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江川 徹 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50201364)
|
Keywords | 気体電子回折 / 分子構造 / グリニャ-ル試薬 |
Research Abstract |
1昨年度の研究の結果からグリニャ-ル試薬の生成または安定化に溶媒が重要な働きをしていると考え、スプレー式ノズルを設計・製作して気体電子回折装置に組み込んだ。これは、グリニャ-ル試薬を溶液のままテフロン製の細管(内径0.5mm)で真空槽中に導き、ノズル先端(内径0.5mm)から微細な液滴として真空中に吹き出すものである。 2ガラスセルを設計・製作した。これは試料溶液を溶媒自体の飽和蒸気圧で真空槽外からノズルに送り込むためのものである。セルの温度を変化させることで溶液の押し圧を調節する。 3グリニャ-ル試薬の溶液で実験する前に、溶媒としてよく使われるジエチルエーテルを用い、ノズルから真空槽中に吹き出して様子を観察した。セルの温度が低いと押し圧が不足し、ジエチルエーテルはノズル先端に達する以前に気化してしまう。セルの温度を-20℃にすると、ノズル先端に液滴が生じ速やかに気化しているのが確認された。この状態で電子ビームを照射すると、1.7μAのビーム電流に対して約200nAの散乱電流が得られた。これは通常の気体試料による散乱の約10倍の値である。 4この条件で回折写真の撮影を行なった。ただしこのままでは散乱電流が大きすぎるので、ビーム電流を0.26μAに設定した。回折写真から得られた分子散乱強度は、気体試料の場合と変わりはなかった。このことは、液滴がノズル先端で完全に気化しており、解析を複雑にするクラスター生成などが起こっていないことを示している。 5同様の実験をCH_3MgIのジエチルエーテル溶液(市販品、2mol/l)で試みた所、ノズル先端や周辺部品の表面に固形物が析出し始め、帯電により電子ビームが不安定になった。これは溶液の濃度が比較的高かったためではないかと考えている。時間的制約のため溶液の濃度や押し圧を変化させて最適条件を探る試みはまだ行なっていない。
|