1994 Fiscal Year Annual Research Report
不均一系不斉修飾水素化触媒反応の新規基質の設計と利用
Project/Area Number |
06640697
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
杉村 高志 姫路工業大学, 理学部, 助手 (30187661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田井 晰 姫路工業大学, 理学部, 教授 (20029961)
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Keywords | 不斉還元 / α-ケトエステル / 1,2-ジケトン / 固体水素化触媒 |
Research Abstract |
酒石酸修飾ラネ-ニッケル(TA-MRNi)を用いたプロキラルなケトンのエナンチオ面区別水素化の新しい基質の検索を行った。研究は予備実験として市販の1位に酸素官能基を持つケトンと研究計画にある2,3-ビシクロ[2.2.2]オクタジオン(1)を基質として用いて行った。 1位にエステル、ケトン、ヒドロキシル基を有するケトン化合物、ピルビン酸メチル、ビアセチル、ヒドロキシアセトンの水素化を行ったところ、生成物のエナンチオマー過剰率(ee)はそれぞれ16%、0%(meso/racemi=9/10)、19%であった。従来の2位置換ケトンからは通常、85-92%eeの生成物が得られるが、エノール化しやすい場合そのeeが低下する傾向にあることが知られていることから、α-ケトエルテルに関してはエノール化しない基質に関しても検討を行った。すなわち、ベンゾイルギ酸メチルを基質として用いると、最高40%eeと向上できた。 次に、1をテレフタール酸から4段階で合成し、再結晶により高純度の基質を得た。この基質はTA-MRNiにより水素化が全く進行せず構造未確定の化合物に徐々に変化した。基質の精製を様々な手法で行っても水素化が起こらないことから、触媒の被毒が起こっているとすれば基質の不純物ではなく、分解物によることが予想される。またこの基質は未修飾のラネ-ニッケルでも水素化できなっかった。 以上、TA-MRNiによる不斉水素化は1位置換ケトンには適さないことが判った。この結果は酒石酸のジオール部が水素結合により、基質上の2つの酸素官能基と配位する立体区別モデルを支持する。また2位置換ケトンに2つの酸素間の距離が近い1では還元自体が進行しないことが判った。これらの結果は、基質の構造の計算結果もあわせて発表を行う予定である。
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