1994 Fiscal Year Annual Research Report
ボリレンを架橋配位子とする金属クラスター錯体の合成と反応性
Project/Area Number |
06640716
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下井 守 東京大学, 教養学部, 助教授 (30092240)
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Keywords | ボリレン錯体 / ボリル錯体 / ボラン錯体 / 金属クラスター錯体 |
Research Abstract |
[Co_2(CO)_8]とB_2H_4・2PMe_3とからボリレン錯体[Co_2(CO)_7BHPMe_3]を生成する反応の反応機構の解明ならびに錯体の反応性については低温のNMRを用いて研究しているが,まだ端緒についたところで,残念ながら成果があがっているとはいえない.また,同様の反応を他の金属-金属結合を持つカルボニル錯体に適用してボリレン錯体の例を拡大することも試みているが,新規化合物の合成はできていない. これまでボラン-ルイス塩基付加物BH_3・Lの配位した錯体とボリレン-ルイス塩化付加物BH・Lの配位した錯体の合成に成功していたが,ミッシングリンクとなっていたボリルールイス塩基付加物BH_2・Lが配位した錯体の合成に成功した.BH_3・PMe_3の存在下,シクロペンタジエニル基で電子豊富になったメチル錯体CpWMe(CO)_3ならびにCpFeMe(CO)_2を紫外照射することにより,メタンを発生し,ボリル錯体CpW(BH_2PMe_3)(CO)_3とCpFe(BH_2PMe_3)(CO)_2をそれぞれ生成した.Cp^*W(BH_2PMe_3)(CO)_3については単結晶X線解析によりW-B距離が2.471(7)Åと求まった.この化合物はHClと反応してCp^*WH(CO)_3とBH_2ClPMe_3を生成する.またPMe_2Phとの反応でもW-B結合が切断され,金属-ホウ素の結合が弱いことが示された.これらの結果から光反応がボラン錯体の合成に有用であることが示された.また,この反応はボランが脱水素をして金属-ホウ素単結合を形成する例としても極めて希な例であるが,ボリル錯体からさらに脱水素反応によってボリレン錯体を合成できる可能性が生まれてきた.
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[Publications] Y.Kawano: "Functionalization of the μ-Silylene Ligand in Cp_2Fe_2(CO)_3(μ-SiH^tBu)" J.Am.Chem.Soc.116. 8575-8581 (1994)
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[Publications] M.Shimoi: ""Current Topics in the Chemistry of Boron"G.W.Kobalka ed." The Royal Society of Chemistry, 406,(293-296) (1994)