1994 Fiscal Year Annual Research Report
新しいキラル共役配位子を有する銅(I)錯体の立体選択的光化学反応に関する研究
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06640729
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
榊 茂好 熊本大学, 工学部, 教授 (20094013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 泰輔 熊本大学, 工学部, 助手 (10253717)
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Keywords | キラル銅(I)錯体 / 不斉光還元反応 / コバルト(III)錯体 / 励起状態寿命 / 溶媒効果 |
Research Abstract |
光学活性なR(+)-α-メチルベンジルアミンを導入した新規な光学活性ビピリジン配位子((+)-tmdebpy)、及び、その銅(I)錯体、[Cu(PPh_3)_2((+)-tmdebpy)]^+1を合成した。1はλmax=362mm(ε=1910)のMLCT吸収を、又、λmax=550nmに発光スペクトルを示し、励起状態寿命は225nsであった。1を用いてエタノール/水混合溶媒中、近紫外光照射下で[Co(edta)]^-(edta^<4->=ethylenediaminetetraacetate)の光還元反応は速やかに進行し、反応後の円二色性スペクトルから、Δ-[Co(edta)]^-が過剰に存在すること、即ち、Λ-[Co(edta)]^-が優先的に還元されていることが示された。光化学反応により消費される[Co(edta)]^-のエナンチオマー過剰率(ee%)は、反応溶液内のエタノール含有率に影響され、エタノール75vol%でee44%であった(反応転化率10%)。エタノールをアセトンに代えてゆくに従い、立体選択性は次第に低下し、アセトン:水(75:25)溶媒中では選択性は逆転し、Δ-[Co(edta)]^-が優先的に還元される。光学分割したΔ-[Co(edta)]^-及び、Λ-[Co(edta)]^-を用いて1の消光反応を行なったところ、出会い錯体形成過程(kr)にΔ-体、Λ-体の相違は見られず、この光化学反応の立体選択性は、出会い錯体形成過程では全く発現しておらず、電荷分離過程もしくは、逆電子移動過程で発現していることが明かとなった。 [Co(edta)]^-と類似の[Co(pdta)]^-(pdta^<4->=1,2-diaminopropanetetraacetate),[Co(cydta)]^-(cydta^<4->=1,2-cyclohexanediaminetetraacetate)の1による光還元反応を行なったところ、反応は進行するが立体選択性はほとんど発現しなかった。Δ-[Co(pdta)]^-はR-pdtaを、Λ-[Co(pdta)]はS-pdtaを含むことから、逆反応での立体選択性が発現せず、立体選択性が極めて小さくなってしまったものと考えられる。現在は溶媒効果を詳細に検討すると共に、1を用いた光不斉合成反応を行ない、成果を上げつつある。
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[Publications] 榊茂好: "Photoinduced electron transfer reaction between [Cu(dmp)P_2]^<cr->(P=PPh_3 or PPh_2(m-C_6H_4SO_3^-) and viologen derivatives"
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[Publications] Inorganic Chimica Acta. 225. 261-167 (1994)