1994 Fiscal Year Annual Research Report
陽電子による分子空間の解明と、それに基づく侵入型化合物の合成と物性の研究
Project/Area Number |
06640753
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
佐野 瑞香 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20017312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 英興 東京学芸大学, 教養学部, 教授 (30011000)
藤田 純之佑 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (80004266)
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Keywords | 陽電子消滅 / 侵入型化合物 / アルカリ金属フラーレン錯体 / フラーレン白金錯体 / ドプラースペクトル |
Research Abstract |
1.C_<60>は面心立方格子を形成しているが、その分子空間にアルカリ金属原子を挿入して侵入型化合物を合成し、制御された空間での陽電子の消滅を研究した。C_<60>粉末とアルカリ金属M(M=K,Rb,Cs)を加熱してM_6C_<60>を得、さらにK_6C_<60>とC_<60>をモル比1:1あるいは2:1に混合して加熱し、それぞれK_3C_<60>,K_4C_<60>を得た。X線回折、ラマン散乱はこれらが単一相化合物であることを明かにした。陽電子寿命スペクトルはいずれも3個の指数関数減衰曲線の重なりとして解析でき、0.23-0.27nsの成分はバルク中の自由消滅、3-4nsの成分は空孔などに捕捉されたオルソポジトロニウムの寿命である。0.54-0.78nsの成分はC_<60>にはない成分で、強度も29-78%と高く、バルク中のオルソポジトロニウムによるものと帰属した。電荷移動によりC_<60>分子がアルカリ金属から得た負電荷がこれらの侵入型化合物でのバルクでのポジトロニウムの生成を容易にしているものと考えられる。 2.時間幅を2.3nsに限定し、K_6C_<60>を用いて時間分割ドプラースペクトルを測定したところ、全領域スペクトルに比べてバックグランドが低いことを見出した。これはオルソポジトロニウムの3光子消滅によるγ線が時間分割により除外出来たことを示し、長寿命成分がオルソポジトロニウムの消滅によることが確認出来た。 3.ピス(トリフェニルホスフィン)白金エチレン錯体とC_<60>との反応から黒色のC_<60>ピス(トリフェニルホスフィン)白金錯体を合成した(収率82%)。これのジフェニルホスフィノエチレンによる置換反応により黒緑色結晶を得た。またジフェニルホスフィノエタンとの反応でも黒緑色結晶を得た。これらは元素分析、電子スペクトルの測定から新しい錯体であることが確認された。なおジフェニルホスフィノメタン、ジメチルホスフィノエタン、2-アミノエチルジフェニルホスフィンからは新物質は得られなかった。
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