1995 Fiscal Year Annual Research Report
環境中微量重金属の濃縮測定のための微生物製剤の開発
Project/Area Number |
06640787
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井勝 久喜 岡山大学, 環境管理センター, 助手 (10260663)
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Keywords | 微生物製剤 / セレン分析 / 微生物濃縮 / 原子吸光分析 / 重金属濃縮 |
Research Abstract |
本研究年度は,凍結乾燥製剤とした細菌を用いて排水中から微量セレンを濃縮し,グラファイト炉原子吸光法で測定する方法を開発した。種々の微生物を用いてセレン濃縮率の検討を行ったところ,排水処理に利用されている微生物製剤から分離したBacillus cereusが最も濃縮率が高かったことから,実験にはこの菌株を使用した。セレン含有排水50mlに6%硝酸5mlを添加した後,凍結乾燥した細菌10mgを加え,2時間攪拌して菌体へセレンを濃縮させた。菌体を遠心分離した後,菌体分解用の硝酸(1+1)0.7mlと原子吸光測定におけるマトリックスモディファイアとしての硝酸パラジウム(1ppm)0.3mlを添加して菌体を分散した。この分散液を直接グラファイト炉原子吸光装置に導入しセレンを測定した。原子吸光測定においては試料の灰化温度を段階的に1,500℃まで上昇させることにより,菌体の灰化とセレンとパラジウムの合金化が最適となり,分析感度が最も高くなることが明らかとなった。セレン濃縮における各種金属イオンの影響を検討した結果,各イオンともセレン10ppbに対して100ppb程度までは影響しなかったが,クロム酸イオン,銀イオン等は1000ppbでは負の影響を与えた。検量線は0から30ppbの範で直線となった。セレンの定量下限は0.5ppbであり,相対標準偏差率は2.2%であった。本方法で排水中セレンを測定したところ,一部の排水については銅-DDTC共沈濃縮-グラファイト炉原子吸光法による測定結果とよく一致した。しかし,塩濃度の高い排水には適用できなかった。細菌は種類が非常に多く凍結乾燥等の製剤化によっても死滅しないなどの性質があり,過去の研究で主に使用されている藻類に比較して多くの可能性を有している。今後は特異的な吸着特性を持つ細菌の検索を行うと共に,分析だけでなく,金属毒性の総合的評価への応用も検討する。
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