1995 Fiscal Year Annual Research Report
自然淘汰の働く座位に連鎖したDNA領域の進化と多様性の集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
06640800
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
飯塚 勝 九州歯科大学, 歯学部, 助教授 (20202830)
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Keywords | 集団遺伝学 / 分子進化 / DNA多型 / 中立説 / 自然淘汰 / ヒッチハイク効果 |
Research Abstract |
最近のDNAレベルの実験集団遺伝学の研究により,自然淘汰に関して中立なDNA塩基座位の集団内多様性に,この塩基座位に連鎖した自然淘汰の働く塩基座位の影響が存在することを示唆するデータが蓄積されつつある.例えば,組み換えが抑制されている領域でDNA多型の減少が見出される例が報告されている. 平成7年度は,自然淘汰の一つの様式である持続型確率的自然淘汰に着目し,自然淘汰に関して中立な塩基座位の集団内多様性に対する持続型確率的淘汰の働く塩基座位の影響についての理論的研究を行った. 任意交配をする半数体生物集団を考え,2つの遺伝子座に着目する.第1の遺伝子座には中立な2つの対立遺伝子A_1,A_2が存在するとする.第2の遺伝子座には2つの対立遺伝子B_1,B_2が存在し,次の自然淘汰が働くとする.第n世代におけるB_1のB_2に対する相対適応度をexp{sn}とする.ここでsn,n=0,1,2,…はP(so=s)=P(so=-s)=0.5,P(sn+1=sn)=p,P(sn+1=-sn)=1-pなる確率過程とする.s(s>0)は自然淘汰の強度,p(0≦p≦1)は環境の持続確率である.u_A,u_Bをそれぞれの遺伝子座での突然変異率,cを2つの遺伝子座間の組み換え率とする.集団の大きさを2Nとする. コンピュータ・シミュレーションと強淘汰,弱突然変異極限における漸近解析を行い、中立な遺伝子座の遺伝的多様性に対するs,p,c,u_A,u_B,Nの効果(遺伝的多様性の減少)を明かにした.その効果はs,Nの増加と共に増大し,また効果を最大にする最適のp(0<p<1)が存在することが分かった.しかし,定量的にはその効果は大きくなく,報告されているデータを説明するには不十分であることも分かった.そのため,中立遺伝子座に存在し得る対立遺伝子数を無限大とした場合(無限アレルモデル)の解析を今後行う計画である.
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