1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640807
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大串 隆之 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (10203746)
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Keywords | 種間相互作用 / 個体群動態 / 自然淘汰 / 植食性昆虫 / 産卵行動 |
Research Abstract |
ヤマトアザミテントウの産卵過程におけるメス成虫の寄生植物個体の選び方とその子供の適応度との関係について、(1)産卵密度とその空間分布の季節的変化、(2)メス成虫の産卵場所の選好性と子供の生涯適応度との関係、(3)繁殖成虫の移動分散行動による産卵場所の利用様式、を重点的に解析した。 産卵メス成虫の移動の活発さは、5月上旬から増加し、6月中旬にピークを迎えるが、その後は急速に低下した。このことから、繁殖期の初期から中期にかけて、メス成虫は活発にアザミの株間を移動しつつ産卵していることが明らかになった。さらに、移動のピーク時点にあたる5月下旬から6月上旬にかけて、株間における産卵密度の差が急激に低下することがわかった。つまり、産卵密度の株間の変異は、メス成虫がアザミの株を頻繁に移動しながら卵を産むことで解消されたのである。この事実は、メス成虫が産卵に際して、すでに卵が多く産まれている株を避けていることを示唆している。 卵密度の低い株を選ぶという本種の産卵行動の適応的意義を検討した。その結果、子供の生涯適応度は密度の上昇とともに急激に低下することが明らかになった。密度依存的な生涯適応度の低下の原因については、幼虫期と越冬中の成虫の死亡が重要であることがわかった。幼虫期の死亡要因についてはまだ十分には明らかにされていないが、捕食者よりも植物の質や量の季節的な悪化の影響の方が大きいと推測される。一方、密度の高い株で育った個体は成虫になっても小さくなる傾向があり、越冬中の死亡は大きな個体に比べて有意に高い、というサイズ依存的な死亡が認められた。 これらの結果から、本種のメス成虫は繁殖期に産卵の対象となるアザミの株の間を頻繁に移動しながら、産卵密度の低い株を産卵場所として選んでいること、また、各株で生育した子供の生涯適応度は密度依存的に低下することが明らかになった。その結果、メス成虫の特有の産卵行動(産卵場所選択)が繁殖成功度を高める適応的な戦術であることが示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Sawada,H.& Ohgushi,T.: "An introduction experiment of an herbivorous lady beetle:Characteristics of the adult population" Researches on Population Ecology. 36. 29-36 (1994)
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[Publications] 大串隆之: "植物を介する昆虫種間の相互作用" 日本生態学会誌. 45. (1995)
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[Publications] Ohgushi,T.: "Population dynamics:New approaches and synthesis" Academic Press,San Diego,USA., (1995)
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[Publications] 大串隆之: "地球共生圏" 朝日新聞社 東京, 32 (1994)