1994 Fiscal Year Annual Research Report
河口域生態系におけるデトリタスの挙動と底質および底生動物群集との関連
Project/Area Number |
06640808
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊地 永祐 東北大学, 理学部, 助教授 (00004482)
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Keywords | 河口域生態系 / デトリタス / 底生動物 / 底質 / C / N比 / セジメント・トラップ / 堆積物 / 干潟 |
Research Abstract |
七北田川河口に位置する蒲生潟と名取川河口に位置する井戸浦潟の底生動物群集と底質、水質を調査し、つぎの結果が得られた。蒲生潟と井戸浦潟では塩分濃度の変動範囲には差異があまり見られず、また底生動物群集の出現種にもほとんど差異が認められないが、優占種には大きな違いがある。蒲生潟では多毛類のゴカイが数的にも、量的にも優占し、井戸浦潟ではイトゴカイ科のHeteromastusが数的に優占し、量的にはイトゴカイの他、チゴガニやヤマトオサガニなどのカニ類と2枚貝のサビシラトリガイが優占していることが分かった。また、底質においても差がみられ、井戸浦潟の方が一般にシルト・クレイ含量が多く、土壌有機物のC/N比が10より高い値をとるのに対し、蒲生潟は砂質でC/N比が10より小さい。また、干満差も異なり、井土浦潟では1m以上あるのに対し、蒲生潟では50cm程で小さい。底質のシルト・クレイ含有率と干満差の違いが優占種の差をもたらしていることが示唆される。底質のC/N比は有機物の起源を探る指標となり、この結果からは蒲生潟の有機物は易分解性で栄養価の高い植物プランクトンのデトリタスであり、井土浦潟の有機物は難分解性で陸上の維管束植物由来のデトリタスであることが分かる。この有機物の質の違いが蒲生潟の方で底生動物の生産量が高い理由と考えられる。これらの結果はセジメント・トラップで採集した沈澱物の分析結果によっても支持された。また沈澱物の量とゴカイの密度の関係から、蒲生潟のゴカイの生産量は、餌による制限を受けておらず、むしろ底質の悪化により制限されていることが分かった。
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[Publications] 菊地永祐: "Bioturbation : Changes produced by macrobenthos in sediment environment" Proc.Japan-Korea Joint Sem.Collaborative Res on Biol.Sci.98-103 (1994)
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[Publications] 菊地永祐: "Plankton and nutrient fluxes in a brackish lagoon ecosystem" Proc.2nd Japan-Korea Joint Sem.Collaborative Res.on Biol.Sci.403-424 (1995)