1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640814
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遊磨 正秀 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (80240828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 芳和 大阪教育大学, 教育, 教授 (40030423)
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Keywords | 琵琶湖 / 侵入種 / 在来種 / 餌資源 |
Research Abstract |
本研究では、琵琶湖に侵入した生物としてヌマチチブ、ブルーギルをとりあげ、琵琶湖における生態について水中観察を行った。ヌマチチブは、湖底の石礫上に成育する糸状藻類を主要な餌として利用していた。糸状藻類は、琵琶湖沿岸部ではここ10数年ほどの間に急増したものであり、現在、ヌマチチブ以外はこれを餌資源として利用していなかった。このことから、餌資源の分割様式の点では、ヌマチチブは最近に生じた新たな餌資源を利用しており、琵琶湖の在来種と競合することなく、その生態的地位を確立したものと考えられた。 またブルーギルでは、琵琶湖に生息するものの中に、体型や微生息場所が異なるものが混在しており、それぞれに摂食様式や繁殖様式も異なると予想されるため、さらに詳しく調査をすすめる必要性が生じた。 一方、琵琶湖在来の魚類では、ほぼすべての種が沿岸部で産卵を行い、稚仔魚期も産卵場所付近で生活することがわかっている。そこで在来種のコイ・フナ類に焦点をあて、その産卵様式の詳細について調査を行った。その結果、コイ・フナ類では、繁殖をひかえた成魚は数日先の降雨を予想し、降雨による沿岸部への栄養塩の流入によって引き起こされる動物プランクトンの増大を見込んで産卵していることが推察された。また、そこでは外来種のブルーギルやオオクチバスの稚仔魚はほとんどみられなかった。このことは、在来種と外来種では、初期生活史における餌、空間資源の利用様式に違いがあることを示唆している。 このように、ヌマチチブやブルーギルなどの侵入種と琵琶湖の在来種の間では、餌資源などの利用様式に違いが見られ、このことによって侵入種がすでに多様な群集を形成していたと言われてきた琵琶湖に定着できた要因の一つであると考えられる。
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[Publications] Yuma,M.: "Food habits and foraging behaviour of benthivorous cichlids in Lake Tanganyika." Env.Boil.Fish.,. 39. 173-182 (1994)
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[Publications] 遊磨正秀: "岩石湖岸や砂泥湖岸の生き物たち" 湖国と文化. 69. 86-87 (1994)
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[Publications] 大野泰史・遊磨正秀: "琵琶湖にきた魚たちの動向" 湖国と文化. 70. 76-77 (1994)
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[Publications] 川那部浩哉・遊磨正秀(編): "生態学からみた安定社会 安定と攪乱-淡水域の生物群集から-" 京都府ゼミナールハウス, 205 (1995)
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[Publications] 角野康郎・遊磨正秀: "日本のウエットランド" 保育社, 198 (1995)