1995 Fiscal Year Annual Research Report
血縁判定・生殖生理を基礎としたニホンザルの配偶戦略研究
Project/Area Number |
06640816
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大沢 秀行 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60027498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 眞澄 新潟大学, 理学部, 教授 (70136232)
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Keywords | 血縁判定 / 繁殖戦略 / ニホンザル / 順位 / エストロジェン / 出産率 / 配偶行動 / 雌による選択 |
Research Abstract |
本研究は、ニホンザルの繁殖単位である群れに、複数の雄がいる(複雄群)条件とその要因を解明する研究の一環である。そのため本研究では、劣位オスの繁殖成功度に複雄群の成立の条件が潜むというアイデアで研究を進めた。調査は、霊長類研究所の若桜群を対象に交尾期の配偶行動の資料を収集した。また出産期には、新生児の血液によりDNA父子判定を行った。95年度の交尾による子供はまだ生まれていないので、配偶行動と出産の資料との照合による分析は94年度交尾の資料を用いた。行動の資料収集には、雄の繁殖成功度(各雄が生ませた子どもの数)、交尾成功度が、どのような要因によって決定されるかということを解析するため、雄間競争の指標として雄の順位を調べるほかに、雌による選択の程度の指標として、交尾の過程での雌からの接近の程度(雄の魅力)を調べた。劣位の雄も繁殖に強く関与していることは数年前の研究で明らかになっていたが、今回の行動、父子判定の分析では、雄の交尾成功度頻度、繁殖成功度は、雄の順位よりむしろ雌の側の判断が強く影響していることが明らかになった。劣位オスの繁殖参加、すなわち複雄化を支える要因は雌の判断であると言うことができる。屋久島の野外研究では、糞資料と配偶行動資料を未だ集積中である。繁殖期に雄の精子の野外での採取が可能になったことは収穫であった。繁殖生理に関しては、雄の発情のためには、雌のエストロジェンレベルが約100pg/m以上、射精のためには300pg/m以上が必要とされることが明らかとなった。このほか、個体群中での出産の一般的傾向を洗い出すため、高崎山の出産の経年変化の資料を収集分析した。個体群中の出産率の分布は、0.3から0.9までが約70%を占め、雌の繁殖成功度も大きな変異があることが分かった。今後は、この雌の繁殖率の変異も考慮に入れた研究を進める必要がある。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] NOZAKI, M.: "Reproductive senescence in female Japanese monkeys (Macaca Fuscata): Age- and season-related change in hypothalamic-pituitary-ovarian functions and fecundity rates." Biol. Reprod.52. 1250-1257 (1995)
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[Publications] MITSUNAGA, F.: "Suppression of sexual bahavior and ovarian in function in lactation Japanese monkeys (Macaca Fuscata) during the greeding season." Primates. 35. 79-88 (1994)
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[Publications] NOZAKI, M.: "Effect of thyroidectomy of seasonal greedin go Japanese monkeys." Congress Publication of IPS. XVth. 231 (1994)
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[Publications] OHSAWA, H: "Population dynamics of Japanese monkeys (Macaca fuscata) in Takasakiyama, Oita prefecture: Trend in 1985-1992. Variation in the Asian Macaques (Eds. T. Shotake & K. Wada)" Tokai University Press (in press), (1996)