1995 Fiscal Year Annual Research Report
個体の生息場所選択に着目したブナ原生林の鳥類群集構造の解明
Project/Area Number |
06640823
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
江崎 保男 姫路工業大学, 自然環境・科学研究所, 助教授 (10244691)
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Keywords | ブナ林 / 鳥類群集 / 生息場所選択 / 個体 / 雪解け / 相互作用 |
Research Abstract |
調査地ブナ林の鳥類群集は、キツツキ科やシジュウカラ科など越冬していると考えられる5種と、雪解け時に渡来するヒタキ科やホオジロ科の夏鳥9種の計主要14種、それにタカ科やホトトギス科の捕食者・寄生者数種からなっている。 7年度は4月末から7月にかけて捕獲・標識、センサス、巣さがしをルーチンとする調査をおこなった。センサスの結果は、主要14種のなかに林内にのみ出現する種(林内種)と林縁部もしくは林内のギャップとその周辺にのみ出現する種(林縁種)があることを示したので、種レベルの生息場所選択を林内のギャップの分布との関係においてある程度明らかにできるめどがついた。夏鳥のキビタキは林内種であなりながら、発見された巣はいずれもギャップの周辺に位置しており、この種の生息場所選択もギャップの分布と関係していることが示唆された。地肌が姿をあらわす本格的な雪解けは、5月10日頃に調査地南東部の林縁から始まった。夏鳥の多くはこの頃に姿を現したが、林内種のオスは雪の解けはじめた林縁ではなく、雪がまだ解けず餌条件がきわめて悪いと予想される林内に渡来当初からなわばりを形成し、種内でさかんに争ったので、好適な生息場所をめぐる激しい種内競争が存在することが示唆された。一方、調査地内でもっとも数の多いシジュウカラ科の各種は、ギャップの分布とは無関係に、林内を埋めつくすかたちでつがいのなわばりを形成した。シジュウカラについては、ほぼ全つがいを標識し、巣を発見し、繁殖の進行状況を明らかにしたが、この過程で、種内はもちろんのこと種間でも少数ながら直接的な争いが記録され、巣穴占有種の交替も確認できたので、樹洞営巣種間での好適な巣穴をめぐる強い競争の存在が示唆された。8年度は、各種をより早い時期に標識・個体識別し、個体レベルの生息場所選択と個体間の相互作用との関係を明らかにする。
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