1996 Fiscal Year Annual Research Report
個体の生息場所選択に着目したブナ原生林の鳥類群集構造の解明
Project/Area Number |
06640823
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Research Institution | Himeji Institute of Technology |
Principal Investigator |
江崎 保男 姫路工業大学, 自然・環境科学研究所, 助教授 (10244691)
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Keywords | ブナ林 / 鳥類群集 / 生息場所選択 / 個体 / 雪解け / 相互作用 |
Research Abstract |
8年度は5月はじめから7月中旬まで鳥の捕獲・標識、標識団体の行動追跡、巣探し、繁殖進行の把握を中心とする野外調査を行った。捕獲・標識がうまくいくようになり、林内の主要種であるシジュウカラ・コガラ・ゴジュウカラ・キビタキ・クロジについてはなわばり分布とその変化を個体レベルで明らかにすることができた。8年度は例外的に雪の多い年で前年と比べると約2週間雪解けが遅く5月末まで雪が残った。キビタキやウグイスといった完全動物食の夏鳥は例年通り5月はじめに渡来しなわばり形成を行ったが、5月中に相次いで死体が発見されるなど、この遅い春の訪れの影響を強くうけたことが示唆されたが、越冬していると考えられるキツツキ類やカラ類などの樹洞営巣種は(1種を除いて)特に影響をうけることなく、前年とほぼ同時期に営巣しヒナを巣立たせた。前年にある種が営巣した樹洞に今年度は他種が営巣した例が複数確認されたので、樹洞営巣種間での好適な巣場所をめぐる種間競争の存在はほぼ確実と考えられる。今年度の課題であったクロジの巣の探索もうまくいくようになり、調査地内になわばりをもつつがいの繁殖状況をほぼ明かにできたと同時に、この種の営巣場所選択を、本種と同様にササに営巣するアオジやウグイスと比較検討する材料がえられた(巣場所の環境測定データを比較検討中)。前年にも十分な情報のある種については、繁殖なわばり数・営巣場所ともに大きな変化はみられていないので、種とごの生息場所選択についてはそれぞれ明確な傾向がでることは確実である(詳細を分析中)。なお、調査を行った長野県カヤの平ブナ林周辺で繁殖していると考えられる鳥は40種近くにのぼるが、同じ場所で12年前に行われた調査結果と今回の結果を比較すると明るい林を好む2種が完全に姿を消したことがわかり、植生の遷移がこの間にすすんだことが示唆された。
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