1994 Fiscal Year Annual Research Report
ラン藻を利用したndh(NADH脱水素酵素)遺伝子産物の遺伝生化学的解析
Project/Area Number |
06640840
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 康弘 大阪大学, 理学部, 助手 (10154874)
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Keywords | ラン藻 / ndh遺伝子 / NAD(P)H 脱水素酵素 |
Research Abstract |
葉緑体DNAには、ミトコンドリア内膜の呼吸鎖電子伝達複合体(NADH:ユビキノン酸化還元酵素)のサブユニットに相同性を示す11種のndh遺伝子群がコードされている。これらの遺伝子産物は、光化学系に連接する系(循環的電子伝達系?)でプラストキノンの酸化還元を担う超分子複合体を構成すると予想されており、その同定と生理機能の解明は、光合成によるエネルギー変換機構を理解する上で重要な研究課題であるが、現在まで単離精製はおろか活性測定の系すら確立していない。また、複合体Iのいくつかの重要な機能サブユニットに対応する遺伝子は葉緑体DNAから欠如していおり、複合体の機能を予想し生化学的解析を進める上での障害となっている。このような背景のもと、本研究では、明暗所ともに生育できかつ遺伝子操作の可能なラン藻Plectonema boryanumの特性を利用して、ndh遺伝子産物の関与する反応系とその分子構築、その生理的意義について明らかにすることを目的として以下の実験を進めつつある。 本年度の研究計画のうち、NAD(P)H結合サブユニット遺伝子の単離を目的とした実験の進行状況は良好であり、新たなndh遺伝子を同定し、遺伝子産物が構成する複合体の機能を予想し生化学的解析を進める上での指針を与えるものと期待される。一方、ndh遺伝子の破壊実験とndh遺伝子の大腸菌における発現産物の調製については、現在なお試行錯誤の段階である。ndh遺伝子破壊実験においては、得られた変異体はいずれも変異遺伝子と野生型遺伝子とが共存するheteroplasmicな遺伝子型を示しており、現在種々の生育条件での選別を繰り返し、その都度数種の単一コロニーからDNAを調製しゲノム解析を行っている。また、大腸菌における発現実験では、ndh遺伝子産物はわずかに同定されるものの、量的に不十分であり精製に至っていない。この点については、ndh遺伝子産物が多くの疎水性(膜貫通)領域を含んでいるため、大腸菌細胞膜の安定性が損なわれているという可能性を考慮し、発現させる領域の縮小と融合蛋白質としての発現を計画している。
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