1995 Fiscal Year Annual Research Report
渦鞭毛藻類の眼点の構造と形成過程の解析:細胞内共生起源の観点から
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06640856
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
堀口 健雄 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20212201)
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Keywords | 渦鞭毛藻 / 眼点 / 細胞内共生 / 微細構造 |
Research Abstract |
昨年度の研究で明らかとなったように渦鞭毛藻類のうちで,黄金色藻類(おそらく珪藻類)を細胞内共生藻に含むものは6種が知られる(このうち4種類は申請著が新たに確認した).これら6種は共通する特徴として,1)類似の共生藻をもつ,2)同じタイプの眼点をもつ,が挙げられる.この6種の渦鞭毛藻に見られる眼点は,渦鞭毛藻類全体を通してこの6種類でのみ見られる,特徴的なものである.この眼点は3重膜に囲まれることから,最も一般的に見られる葉緑体の中に眼点が存在するタイプの葉緑体部分が消失することにより形成されたとの仮説が出されていた.しかしながら,この眼点の複製様式や葉緑体(眼点)DNAの存在に関しては知られていなかった.本研究でこれらについて検討したところ,眼点は複製に先立ち脂状の後端がちぎれ,それが元の眼点の近傍に位置するように移動すること,細胞内で形成された脂質顆粒がそのちぎれた部分に集合し新たな眼点を形成することが明らかとなった.このようにこのタイプの眼点は,分裂と新生の両要素によって複製されるという極めて珍しい複製様式をもつことが明らかとなった.また,DAPIの蛍光染色による眼点中のオルガネラDNAの検出は2種についておこなったが,DNAと断定できる蛍光は検出されなかった. また,今回の重要な成果として,上述のDinothrix paradoxaにおいては,細胞内共生体は存在するものの,他の5種類と異なって共生藻の核が消失している進化段階にあることを明らかにしたことが挙げられる.このことは,同じ系統に属すると考えられる渦鞭毛藻類の内で,オルガネラの獲得に向けてさらに一歩先の進化段階へ達したものをわれわれが研究材料として手に入れたことになるからである.
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[Publications] 堀口健雄: "渦鞭毛藻類に見られる細胞内共生の多様性と進化" 日本植物分類学会報. 11(印刷中). (1996)
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[Publications] T.Horiguchi: "Heterocapsa circularisquama sp.nov.(Peridiniales,Dinophyceae):a new dinoflagellate causing mass mortality of bivalves in Japan." Phycological Research. 43. 129-136 (1995)
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[Publications] T.Horiguchi: "Amphidiniella sedentaria gan.et sp.nov.(Dinophyceae),a new sand-dwelling dinoflagellate from Japan." Phycological Research. 43. 93-99 (1995)
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[Publications] T.Horiguchi: "Ultrastructure and ontogeny of a new type of eyespot in dinoflagellates." Protoplasma. 179. 142-150 (1994)
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[Publications] T.Horiguchi: "Ultrastructure of a new marine sand-dwelling dinoflagellate,Gymnodinium quadrilobatum sp.nov.(Dinophyceae)with sepcial reference to its endosymbiotic alga." Eur.J.Phycol.29. 237-245 (1994)
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[Publications] T.Horiguchi: "Gymnodinium natalense sp.nov.(Dinophyceae),a new tide pool dinoflagellate from South Africa." Jpn.J.Phycol.42. 21-28 (1994)