1995 Fiscal Year Annual Research Report
海産プラナリアの形態分化機構の解析、特に誘導物質や遺伝子の単離に関する研究
Project/Area Number |
06640857
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
石田 幸子 弘前大学, 理学部, 助教授 (80003515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 あきら 弘前大学, 理学部, 教授 (80034635)
手代木 渉 弘前大学, 学長 (40003313)
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Keywords | 海産プラナリア / 多岐腸類 / 再生 / 遺伝子の単離 / 培養 |
Research Abstract |
1.再生芽中における脳の検索に関する研究では、再生芽中の組織を光顕的に精細に調べたところ、脳を少しでも含む虫片だと切除された脳部を再び再生してから眼を誘導し、元通りの頭部を形成することが明らかとなったが、脳を含まない虫片では、再生芽中に脳が全く形成されないことが確かめられた。2.cDNAライブラリーの作製に関する研究では、海産プラナリアの方は、オオツノヒラムシ、Pseudostylochus sp.の二種でそれぞれ作製したので、遺伝子の単離に向けて着手している。先行して行なっていた淡水棲プラナリアでは、ヒストンH2B遺伝子断片、ミオシン重鎖遺伝子断片、およびミトコンドリアlargeリボゾ-マルRNA (MtlrRNA)をコードする遺伝子断片を、単離している。MtlrRNAは、ショウジョウバエやカエルなどにおいて、生殖系列形成因子の一つとして生殖細胞決定に関与していることが近年明らかにされているので、海産プラナリア卵におけるこの遺伝子の発現を調べる為、in situハイブリダイゼーションを行なったところ、植物極側に特異的なシグナルが見られ、現在生殖細胞形成を追跡中である。3.培養実験では、オオツノヒラムシ解離細胞からの再構築実験を試み、培養日数の経過にともない、神経細胞などに顕著な組織化が進んでいることが確かめられた。また、得られた細胞塊を覆っている最外層の繊毛を持った細胞は、表皮細胞と思っていたが、腸壁細胞特異抗体を用いての解析実験により、腸壁細胞から由来した細胞であることが判明した。つまり全虫体からの解離細胞を用いたにもかかわらず、表皮細胞は、この細胞塊から離反したと考えられ、プラナリアは、動物系統学上、三胚葉を持つに至った最初の動物群ではあるが、中胚葉といっても、高等動物のような細胞層を作らないため、このような結果が生じたものと、推測された。
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