1995 Fiscal Year Annual Research Report
匂い環境によりラット嗅覚神経系のシナプスに生ずる可塑的変化の形態学的解析
Project/Area Number |
06640871
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
市川 眞澄 (財)東京都神経科学総合研究所, 解剖発生学研究部門, 主任研究員 (20124414)
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Keywords | 嗅覚 / 鋤鼻神経系 / フェロモン / シナプス / 可塑性 / ハムスター |
Research Abstract |
匂い環境による嗅覚神経系のシナプスに生ずる可塑的変化を調べるため、昨年度の床敷の影響に引き続き、本年度は、尿暴露のシナプスにおよぼす影響を調べた。 フェロモンは尿のなかにも多く含まれている。そこで雌ハムスター尿、卵巣摘出ハムスター尿、雌ラット尿を採取し、40日齢の同腹雄ハムスターを1匹ずつ飼育し、これら採取尿を(コントロールとして蒸留水を)脱脂綿に含ませて、ケージの中におく。暴露用の尿および水は毎日交換する。15日後シナプスの形態を観察しSAZを計測した。結果を図4に示す。雌ハムスター尿と雌ラット尿暴露の場合、蒸留水暴露にくらべて有為にシナプスのサイズ(シナプス後肥厚)が大きくなっていることを示している。卵巣摘出ハムスター尿暴露でも、大きくなる傾向を示したが、統計学的には差は生じなっかった。 今回の結果から、シナプスのサイズはフェロモン環境が豊かな環境で生活するほど大きくなることがあきらかになった。一方、シナプス後膜肥厚には、構造蛋白、受容蛋白、酵素などシナプス機能を調節する様々な分子は密に存在することが知られている。したがって、後膜肥厚が大きくなることは、分布する分子が増加することになり、結果としてシナプスの機能を亢進することになると推測される(図5)。これらのことから今回示した事実は、これまでに想像されていたように、使用頻度あるいは活動依存性シナプスの可塑性を、自然のフェロモン刺激条件で鋤鼻嗅覚系でおこることを証明したことになる。
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Research Products
(1 results)