1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640899
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
角野 康郎 神戸大学, 理学部, 助教授 (90127358)
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Keywords | 水生植物 / 繁殖様式 / 遺伝的多様性 / 酵素多型 |
Research Abstract |
今年度は以下の種を対象に,繁殖生態ならびに遺伝的多様性の調査を進めた。 1.ヒシ属の3種について交配様式を調査し、自家受粉が卓越する状態を明かにした。とくに絶滅危惧種であるヒメビシは,花弁が閉鎖した状態で結実するなど,自殖傾向がより顕著であった。酵素多型の解析においては,3種とも集団内ならびに集団間の変異がほとんど無かった。形態的な多型とは対応しなかったことになり,今後の研究に課題を残した。 2.クロモは,ほとんど無性繁殖を行なうが,酵素多型の解析によって雌雄異株系統については少なくとも31の遺伝型が存在することが判明した。頻度は少ないながらも有性生殖が遺伝的多様性の維持と増加に寄与していることが明かになった。一方,雌雄同株系統では,遺伝的な変異は認められなかった。これは,日本産のこの系統が全て3倍体であることに関係していると考えられる。また,集団内における変異に実態についても調査を進め,兵庫県の加古川水系には少なくとも8系統のクロモが分布することが判明した。 3.タヌキモとイヌタヌキモは,ともに無性繁殖で広がっている種と考えていたが、酵素多型の分析の結果,集団によって多様な遺伝型を示した。この遺伝的変異の由来について,さらに研究が必要になった。 4.帰化植物のオオカナダモとコカナダモは,ともに雄株のみが帰化しており,栄養繁殖によって増えている。酵素多型の調査でも,各地から採集した30〜40集団に多型は認められなかった。 5.他のグループにおいても,予備調査を行ない,解析方法の確立を進めた。
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