1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640899
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Research Institution | KOBE UNIVERSITY |
Principal Investigator |
角野 康郎 神戸大学, 理学部, 助教授 (90127358)
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Keywords | 水生植物 / 繁殖様式 / 遺伝的多様性 / 酵素多型 |
Research Abstract |
1.繁殖様式の調査:今年度はヒシ属とガマ属の繁殖様式について調査を進めた.ヒシ属においては,前年度の予備調査結果を踏まえヒシとヒメビシについて集中的に調査を行なった結果,両種とも自殖を主とすることが判明した.特にヒメビシではアポミクシスを示唆する結果が得られた.より自殖への特殊化が進んでいる可能性がある.ガマ属では風媒花と見なされているガマとヒメガマの交配様式を調査した.ヒメガマでは他殖の傾向が認められたのに対し,ガマは自家受粉の割合が高いことが明らかになった. 2.酵素多型を用いた遺伝的多様性の調査:ヒシ属においては,サンプリング地点を増やして前年度の資料を補完した.集団内での多型わ集団遺伝学的なパラメーター(F-統計値)を用いて検討したところ,遺伝的多様性が低いことが明らかになった.また地理的な変異についても特定の変異パターンは認められなかった.しかし,絶滅危惧種のヒメビシで集団間の分化が見られ,自殖による遺伝的隔離と産地の減少による遺伝的交流の欠如が原因と考えられた.この知見は,種の遺伝的多様性の保全の観点からは重要である. ガマ属では,ヒメガマに多型が認められたに対し,ガマでは認められなかった.ヒメガマでは実生集団の変異が成植物集団と比べ高いことも明らかになり,淘汰の存在や創始者効果の影響を示唆する興味深い結果となった. 3.結果のまとめ:前年度に行なった結果と合わせ,繁殖様式と酵素多型によって検出できる遺伝的多様性のあり方が,大きなレベルでは対応付けられることが判明した.分類群ごとの事情の解明が今後の課題である.現在の段階ではバンド・パターンによる類型化が問題点を洗いだすうえで有効である.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hirahaya, M.: "Biosystematic study of Lemna minor L. (Lemuaceae)" Acta Phytotax Geobot.46. 117-129 (1995)
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[Publications] 角野康郎: "日本水草図鑑" 文一総合出版, 179 (1994)