Research Abstract |
今年度の初頭に,台湾,フィリピン,インドネシア,インド,ニュージーランド,アメリカ合衆国,アルゼンチン,イギリスのシダ研究者16名に文書を発送して,ミズワラビCeratopteris thalictroidesの胞子の提供を依頼した.その結果,これまでに,台湾2地域,インドネシア2地域,インド1地域,ニューギニア1地域,オーストラリア1地域,ハワイ1地域,アフリカ1地域,南米1地域,計10地域のミズワラビの胞子を入手することができた.また,昨年末には関東地方と沖縄地方に野外採集にでかけ,北方産ミズワラビと南方産ミズワラビの胞子の補充を行うことができた. 上記10地域のうち,インドネシア産とハワイ産のミズワラビについては,胞子を散布して配偶体を培養し,それを用いてアロザイムの予備分析を行った.その結果,前者は日本の南方型と,後者は日本の北方型とそれぞれよく似たアロザイム組成を示すことが明らかとなった.ただし,いずれも日本の北方型の一部に見られる特殊なPGIアロザイムは認められないので,それをマーカーとすれば,本研究の目的とするところのミズワラビの大規模な交配実験は比較的容易に進めることができそうである.引き続き他地域のミズワラビのアロザイム組成を明らかにするために,目下配偶体の培養を進めているところである. なお,ミズワラビの染色体数は一般にn=78とされているが,n=77という報告もある.異数体が存在すれば即座に生殖隔離を伴うことになるので,上記のミズワラビについては,アロザイム分析と併行して,栽培株による染色体数の確認も行いつつある.
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