1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640911
|
Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
日野 晶也 神奈川大学, 理学部, 助教授 (00144113)
|
Keywords | 原索動物 / ホヤ / 遺伝的分化 / ミトコンドリアDNA / 生殖的隔離 / 地理的隔離 / 種分化 |
Research Abstract |
本年度は生殖時期を異にするマボヤ3タイプの集団間の遺伝的距離がどれほど離れているかを、マボヤとは明らかに別種とされているアカボヤと比較して検討を加えた。具体的には、陸奥湾内に棲息しその生殖的隔離が確認されている3タイプのマボヤ各集団それぞれ約25個体と稚内産のアカボヤ36個体から、各個体毎にミトコンドリアDNAを単離・精製し、それを13種の制限酵素で消化して得られた断片を電気泳動して得られたパターンを検討した。その結果、マボヤの各集団は総計7種の遺伝型に、アカボヤは8種の遺伝型に分類された。制限酵素消化による断片長を比較検討した結果を基に、各遺伝型間の遺伝的距離を算出し、さらにそれぞれの遺伝型の各集団内における出現頻度を考慮して、各集団間の分岐系統樹を作成した。以上の解析により、マボヤとアカボヤの集団間の遺伝的距離d値は約10.4×10^<-2>(約400万年前に分岐)、一方、陸奥湾内に棲息し生殖時期を異にするマボヤ各タイプの集団間におけるd値は約0.7〜0.1×10^<-2>(約30万年〜4万年前に分岐)と算出された。さらに、マボヤのミトコンドリアDNAの制限酵素地図を作成し、実際に得られた制限酵素消化断片の電気泳動パターンとを比較することにより、遺伝的変異を生じた位置を制限酵素地図上で検討した。この解析方法では先の解析と異なり、マボヤとアカボヤ種間での比較はできないが、マボヤ種内の各タイプの集団間についてさらに精密な統計処理が可能で、分岐系統樹の枝長の標準誤差も算出できる。その結果、生殖的に隔離が成立しているマボヤの3タイプ間の分岐系統樹は一応作成できるものの、枝長の標準誤差が大きく分岐点での誤差範囲が広いために、各集団が統計的に有意に分岐しているとは言い難いという結果を得た。現在、日本海、太平洋、瀬戸内海沿岸のマボヤの集団を分析し、地理的隔離による遺伝的分化について解析を進めている。
|