1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06640924
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
榎本 知郎 東海大学, 医学部, 助教授 (80056316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 清明 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (50027497)
長戸 康和 東海大学, 医学部, 専任講師 (30056345)
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Keywords | ニホンザル / 加歳 / 精巣 / 精子形成 / アポトシス / 性行動 |
Research Abstract |
ニホンザルの加齢にともなう精巣の形態・機能の変化と性行動の変化の関連について検討を加えた。研究には、霊長類研究所で飼育されている老齢ニホンザル(20歳以上)のオス5頭と、対照用のオス5頭(10-15歳)を使用した。血中の男性ホルモン濃度を定量するため、野外の交尾期にあたる11月と、非交尾期にあたる3月に採血し、またメスとペアリングして行動を観察した。また、精巣組織をバイオプシーで採取し、(1)フォルマリン固定、パラフィン包埋、PASヘマトキシリンおよびHE染色による組織標本を光学顕微鏡で観察、(2) TUNEL法によるアポトシスを示す細胞の検出、(3) Hueck法などによるリポフスチンの染色、(4)パラフォルムアルデヒド・グルタルアルデヒド混液で固定、親水性メタクリル樹脂で包埋、PASヘマトキシリンおよびHE染色の標本を光学顕微鏡と電子顕微鏡で対比観察する、などの方法によって分析した。その結果、性行動には季節的変化が認められるものの、年齢階層による顕著な差は認められなかった。また、精巣組織の所見から、(1)老齢個体では、HE染色の標本を光学顕微鏡で観察するかぎり正常に精子形成が行われているが、アポトシスを起こしている精子形成細胞が多いこと、(2)精細管壁のセルトリ細胞の細胞質にリポフスチンが多数認められること、(3)精細管基底膜の肥厚、迂曲、切り込みなどが認められること、(4)精子細胞のアクロゾームの発達が悪いこと、などの特徴が認められた。これらの結果から、老齢個体でも性行動が見られ精子形成も行われているにもかかわらず、精子形成細胞の変形やアポトシスの結果から精子形成能力が低下していることが推定された。ニホンザルで、繁殖機能が低下したのちにも性行動が見られることは、その行動のメカニズムの進化を考察する上で興味深い。
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[Publications] Tomoo Enomoto, Kiyoaki Matsubayashi, Y. Nagato & M. Nakano: "Seasonal Changes in Spermatogenic Cell Degeneration in the Seminiferous Epithelium of Adult Japanese Macagues (Macaca fuccata fuscata)" Primates. 36. 411-422 (1995)