1994 Fiscal Year Annual Research Report
高電界印加法による重水素吸蔵固体中の余剰熱の発生機構に関する研究
Project/Area Number |
06650313
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山田 弘 岩手大学, 工学部, 教授 (60125482)
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Keywords | 高電界印加 / 重水素 / パラジウム / 中性子 / タングステンブロンズ / 余剰熱 / 水素吸蔵 / ヘリウム4 |
Research Abstract |
50ナノ秒10マイクロ秒の5種類のパルス幅をもつ方形波パルス高電圧発生器およびガス分析用作動排気システムを構築した。タングステン酸ナトリウムと三酸化タングステンから電解還元法により700〜800℃下でバルク状酸化タングステンブロンズを合成した。合成はカソードを白金板,アノードを白金板またはタングステン線として,大気圧下において磁性アルミナのるつぼ中で行われた。作成した試料のX線解析を行い,Na_xWO_3の分子式においてxは0.81である結果が得られ,試料が単結晶に近い構造となっていることが分った。 中性子計測用テストセルの上部には電解研磨したタングステン針を針電極として,下部には平板電極を配置した。平板電極上に約5mm立方の酸化タングステンブロンズの結晶を置き,重水素ガスを2気圧で封入した。ガス充填後,酸化タングステンブロンズをア-ス側として対向する針電極に負の3kVを印加し,そのときの中性子数の計測を行った。30試行中1試行で過剰中性子が検出された。この過剰中性子の計測時間は100秒間にわたり,全中性子計測数は550であった。バックグラウンドの計測数が1時間当り27個であるため,これはバックグラウンドレベルの700倍となる。計測の時間間隔は1秒毎である。1秒間の最大計測中性子数は50である。核反応は結晶の(100)面で起きたと考えられる。印加電圧は破壊電圧の50%程度であり全路破壊時においても電磁ノイズによる計数の増加は全くない。また電圧印加時間を含めて数百時間に及ぶ中性子の計測時間中外部雑音による計測数の増加は起きていない。このことからこの過剰計測数が雑音によるものとは考えにくい。実験で用いた,微量な不純物を含む重水素ガスについて,放電開始前と放電後に質量分析を行った。質量数2,3,4,および5以上の質量数について有意義な相違が認められなかった。用いた質量分析系の分解能では重水素分子とヘリウム4の判別は困難であり,微量のヘリウム4が生成されているか否かは不明である。
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[Publications] 山田 弘: "マイクロ秒パルス電圧印加によるベンゼン中の放電進展に及ぼす四塩化炭素の添加効果" 電気学会論文誌A. 114. 236-242 (1994)
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[Publications] 藤原 民也: "Transient Glow Discharge in Nitrogen after the Breakdown" J.Phys.D:Appl.Phys.27. 826-829 (1994)