1994 Fiscal Year Annual Research Report
貯水池曝気循環による藻類繁殖制御の機構とその効果についての研究
Project/Area Number |
06650557
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅枝 隆 埼玉大学, 工学部, 助教授 (40134332)
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Keywords | 貯水池 / 高栄養化対策 / 成層破壊 / 気泡噴流 / 生態系 / 水質対策 / 植物プランクトン / 水資源 |
Research Abstract |
貯水池の富栄養化現象は単に景観上問題になるばかりでなく、安全な水を供給する上において極めて重要な問題である。この貯水池の富栄養化を防止する方法としてはいくつかの方法が試みられているが、現在最も広く行われている方法は、貯水池内で散気管によって気泡を貯水池深部より放出し、貯水池内に存在する温度による成層を破壊する方法がある。ところが、これまでこの方法は場合によっては極めて効力を発揮するものの、場合によっては逆に水質を悪化させることになっていた。しかも、この原因が明かでないために、運用上で大きな問題であった。 本年度は、まず、散気管によって生ずる気泡プルーム流れをモデル化し、一次元的に成層破壊の機構をシミュレートするモデルを作成した。次に、それに栄養塩および植物プランクトンについての関係を付加し、生物生産を予測するモデルを作成した。その後で、まず、アメリカ合衆国ミネソタ州の湖および日本の湖の湖内の温度分布、栄養塩分布、植物プランクトンの分布をシミュレートし良い一致を得ることによって、モデルの妥当生を検討した。 次に、このモデルを用いて、わが国の典型的な貯水池に対して、気象条件、流入水条件、流入栄養塩条件を与えて、散気管の数を変えて計算を行い、散気管による成層破壊が植物プランクトンの増殖に与える影響について検討した。その結果は次のようなものであった。 まず、散気管の数が極めて少ない場合には、表層付近でわずかに成層が破壊され、それに伴って流入河川水の通過する位置がわずかに低下する。植物プランクトンの発生に必要な栄養塩は主にこの河川水によってもたらされており、その位置が低下しとどく日光の量が減少した分植物プランクトン量は減少する。ところが散気管の数を増していくと、下層に滞留する栄養塩を大量に表層に持上げることになり、一端は何もしない場合よりも植物プランクトン量は多くなる。さらに、散気管の数を増していくと、今度は植物プランクトンを深部の光の届かない層に運ぶ効果の方が卓越するようになり、植物プランクトンの量は減少する。 以上のように、これまで不明であった散気管による成層破壊が植物プランクトンの増減に及ぼす効果について明かにした。
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[Publications] 浅枝 隆,池田裕一,福田正晴,高見英明,Vu Thann Ca: "貯水池内温度躍層制御における散気管の効率的運用方法" 水工学論文集. 38. 319-324 (1994)
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[Publications] Asaeda,T Ikeda,H.,Imberger,J. Ca,V.T.: "Destratification of Reservoir with Bubble Plume" Fourth International Symposium on Stratified Flows. 2. 1-8 (1994)
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[Publications] Asaeda T.,Son T.V,Ca,V.T,Imberger J.: "Controlling Lake Phytoplankton Bloom Using Bubble Plume" Proceedings of the International Symposium on Ecologyz Engineering. VII1-12 (1994)
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[Publications] 池田裕一,浅枝 隆,須賀尭三: "連続曝気式深層水揚水施設による密度成層の混合効率" 水工学論文集. 38. 325-330 (1994)